ダウンロード数は人口の約14%だけど効果は? 接触確認アプリ「COCOA」
“6割説”は誤解
新型コロナ接触確認アプリについては一時、「普及率が6割なければ効果がない」と言われていました。 これはオックスフォード大の研究が元とされ、安倍晋三前首相も5月25日の記者会見で、同大学名を挙げながら「このアプリが人口の6割近くに普及し、濃厚接触者を早期の隔離につなげることができればロックダウン(都市封鎖)を避けることが可能となる、大きな効果が期待できる、という研究があります」と発言しています。 しかし、「6割説」はその後、誤りだったことが指摘されています。 日本大学生産工学部マネジメント工学科の大前佑斗助教は、「この説はオックスフォード大の研究成果が間違って要約されて世に伝達されたものであり、後に同大の研究者自身が、アプリの利用率が低くても低いなりに効果はあると指摘しています」と語ります。
2割の利用でも効果あり
大前助教の研究班は、人工知能(AI)を活用してCOCOAの感染者削減効果のシミュレーションを行いました。 人口約1000人のうち、10人が感染し、COCOAを通じて感染を報告したと仮定。(1)人口の2割がCOCOAを利用(2)報告を受けた人が外出を8割以上控えた――という条件の場合、1か月後の感染者数は、COCOAを利用しない時よりも3分の2以下に減少する、との結果が出たそうです。
この結果から、大前助教は現状の利用率でも感染拡大を抑える一定の効果が見込まれると指摘します。ただし、大前助教の分析でも6割以上がアプリを利用すれば収束に向かう可能性があるとの結果が出たとのことです。 また、大前助教は「COCOAだけで感染を収束させようと考えるのではなく、3密を防ぐなどの各種対策も講じながら取り組めば、6割に至らなくても収束に向かう可能性はある」とも語ります。
ダウンロードと“正しい使い方”がカギ
COCOAの利用拡大に向け、政府は利用を促す啓発動画のテレビ放映やネット配信などの周知活動に取り組むとともに、日本野球機構やJリーグなど各種団体・企業にも協力を呼び掛けています。筆者は9月、プロ野球観戦のために甲子園球場を訪れるたびに、COCOAの利用などを勧めるチラシを係員から手渡されました。こうした広報活動は、他のスポーツ・イベント会場でも行われています。 感染した人のCOCOAへの報告件数は利用開始から6月の利用開始以来、9日現在で累計1078件。10月2~9日の増加数は98件でした。これに対し、2~9 日の全国の新規感染者数の合計は3424人。まだまだ感染者のうちCOCOAで報告している人が少ないことが分かります。 利用者側が何らかの理由で一度アプリを削除し、再ダウンロードした際は複数回カウントされる場合があると厚労省のサイトには書かれています。しかし、厚労省の担当者によると、こうした複数回ダウンロードした人がどの程度いるかは、「確認できるかどうかも含めて現状では分からない」とのことです。 また、ダウンロード数が増えても、ブルートゥースをオンにしないなど“正しい使い方”をしないと効果を発揮しません。担当者は「オンにしていない人がどの程度存在するのかは分からない」としつつも「初期設定時にオンにするようお願いする流れになっており、その後わざわざオフにする必要はなく、オンにしていない人はそれほど多くないのではないか」と見ています。 感染者の報告については「これまでは、陽性判定が出た方に対して各保健所から『どうされますか』などと登録の意志を確認していた」と言います。ただ、COCOAの機能を発揮させる意味もあり、9月末ごろからは登録が任意であることは伝えつつも、「『感染拡大防止のため、登録をお願いできませんか』と一歩踏み込んでお願いするようにしている」と話します。 (取材・文:具志堅浩二)