【風間俊介さんインタビュー/前編】風間俊介さんが自分に「闇」を感じるとき
理性的な好青年というトムの第一印象は、場面を重ねていくと、少しずつ剥がれ落ちていく。脆くて危うくて、かなりの難役だ。 「観客の皆さんは、芝居が始まるとしばらくの間、違和感を覚えるかもしれない。トムとダリルの会話が、成り立っていないんです。相手の話をしているようで、自分の話をしたりするから、噛み合わない。 でもしばらく見ていると、このディスコミュニケーションが確信的なものだとわかって、そこから面白くなるんでしょうね。やっている僕たちにとっては、成り立っていない会話を続けるのはすごく難しいし、台詞を覚えるのも大変なんですけど(笑)。 お芝居を始めて、もう24~5年になるのかな? こういう芝居をするのって、初めての挑戦になるんじゃないかと思っています」 泣いたり笑ったり、スカッと爽快なお芝居ではないけれど。 「ここ数年、コロナウイルスや経済的な停滞があって、鬱屈が溜まりに溜まっている状況ですよね。そんな中でこの舞台を観ていただくのは、とても意味があることだと思う。そして、この舞台に足を運んでくださるのは、今という時代が内包している恐怖心とか焦燥感を敏感に感じ取っている方たちだろうと思います。 本当は、そんなことに気付かずにいる方たちにこそ、観て欲しい作品なんですけどね。 そしてこの作品、東京公演を上演する新国立劇場にぴったりだと僕は思っています。 僕が観客として新国立劇場に行くときは、爽快でわかりやすいエンターテインメントを求めていなくて。観たあとでじっくり自問自答したり、なんか、心や頭に効く栄養素、つまり教養を補給しに行く感覚なんです。だからこれ、新国立にぴったりの作品だなって(笑)」 難しい役とわかっているからこそ、今、風間さんは、やる気に満ちている。 「超怖い!と思いながら、すごく楽しみにしています」
ところで風間さん、風間さんが抱えている闇って、いったいどんな? 「怒りの遅効性、ですね(笑)。怒るのが遅い、遅すぎるんです。 例えばどこかのお店に行くとします。そこで『何、それ?』『なんなの?』って、腑に落ちないイヤなことがあったとする。でも僕、その場では怒らないんですよ。いったん飲み込んで、精査する。 『こっちが悪かったのかな』とか『お店の人、忙しかったのかな』『あの人、何かイヤなことでもあったのかな』って、いろいろ考える。 その場を離れて1時間後、1週間後、ときに半年後、『やっぱり変だ!』って思うんです。そんな自分が『ヤバイ!』って思います(笑)。 店を出て3時間後くらいに、一瞬、想像することもあるんですよ。その店に戻って『さっきのことですけど』って言いに行こうかなって。 そういう妄想をしているときの自分が怖い。その場で突発的に怒る人のほうがマシ、と自分では思っているので。それが僕のモンスター、ですね」 感情を爆発させることなく、その場の状況や自分自身の胸の内をあれこれ考えて、それでも残る違和感をとことん分析する。 冷静にして理性的。セルフ・コントロールの達人かもしれない。 40代に入ったばかりで、気力体力ともに十分。とはいえ、若い頃と比べると、あちこち変化も感じる年頃。自分の健康について、活力維持について、どんなヴィジョンを持っているのかは、インタビューの後編で。 知識と経験に基づいた、自信に満ちたコメント力は、美と健康についても発揮されるのか?