「要介護認定取りました」認知症の母、ダウン症の姉と暮らすにしおかすみこがカリスマ介護士に相談したいこと
「プロに話す」ことからスタート
その後、にしおかさんは包括センターに電話した。 「プロの方が、一問一答みたいな感じで聞いてくださるんですよ。家族は何人ですか、母はどんな感じですか、認知症はとか、答えていけばいいからすごく話しやすかった。何が解決したっていうわけではないんですけど、プロの方に聞いてもらえると、何で悩んでいるかの整理整頓ができる。話して良かったし、心が救われたんです」 こう打ち明けたにしおかさんに、高口さんが補足した。 「自分が苦しんでいるのは、もしかしたら社会的には小さいことで、専門家に言うようなことではないんじゃないかって、ご家族は思うんですよね。家の中のことを外の人に話すことによって、社会的に認められたっていうか、その困り事が、自分の勘違いとか思い込みではなく現実にあるんだっていうところからスタートですよね」 当時、地域包括支援センターの職員がにしおかさんの実家に来た。「80歳以上の方を見守るサービスがある。母だけじゃなくて、父と障害のある姉、3人の健康状態を見に来る。もし元気だったら顔を出せば?みたいな言い方をしたらどうか」と事前にアドバイスをもらったが、すぐ母にばれた。 にしおかさんは「母は、自分だけ見に来るんだろう、ぼけたって言われるんだろうって。もと看護師で、訪問介護もしてきた人だから、だいたいの流れがわかるのかも。でもそういった職員さんのアドバイスは嬉しかったです」と、当事者の心と家族の気遣いを語った。
要介護認定の申請をしなかったわけ
4年前は精神科にも行き、母はアルツハイマー型の初期の認知症とわかった。地域包括支援センターの職員がにしおかさん宅に母の様子を見に来た。 「地域包括支援センターの方が見に来てくださったときに、母は絶対会わないって言ってたのに、来た途端に、すごくにこやかに対応したんですよね。職員さんはプロだから、その帰り際、私だけに『おそらく、要支援1か2ぐらいですかねえ』って仰ってました。職員さんが帰られたあと、あんなにお客様対応を見せていた母が『玄関に塩をまけー!』ってなって。豹変ぶりがもう(笑).。私、疲れてしまって。そこから要介護認定は受けずにズルズルしちゃったんです。 ズルズルして、もう4年経ちます。母はまだ元気です。でも物忘れや妄想などの症状は進んでます。私は日々疲れることが多くなってきて、そろそろ認定を受けようかなって思います。でも、やっぱり迷うんです。今、 申請すると、まず、訪問調査の方がウチに来ますよね。で、たくさんの質問をされると思うんですけど、そのとき、きっと、母は答えられないことが多くて、そんな自分に落ち込むんだろうな。今、差し迫って必要じゃないのに、先々スムーズにサービスを利用したいということで、今、目の前の母を傷つける?って思ったり。でも、私だって自分の人生があって、自分の元気と幸せを一番に考えるんだ、だから少しでも使えるサービスがあるなら利用したいって思ったり。うーん、って迷って、またグズグズしちゃって動かないままになるんです」 お母さんの言動や、にしおかさんが逡巡したことが、具体的で参考になる。 「もうひとつ、私の気持ちがグズグズしてしまうのがあって。 母と姉って、最後までどうしても一緒に家で過したい人たちなんです。できれば叶えてあげたいです。 で、 例えば今後、母がデイサービスを利用するとしたら、姉が家に残るわけです。私は働きに出るし、そもそも母の代わりはできません。じゃあ、姉をひとり家に残せないから施設にお願いするとします。ずっと一緒にウチにいたい2人がバラバラになって、実家にいなくてもいい私が家に残るのか?誰の幸せのために私は動こうとしているんだろうって思ってしまいます」