イチロー&松井秀喜氏がデータ依存のメジャーリーグに「ストレス溜まる」と危惧、「日本も危ない」と警鐘
■「データ通りに投げたら痛打されても怒られない」 数年前にメジャーリーグでプレーした元投手はこう語る。 「メジャーは中4日で登板するんですけど、コンディション調整よりデータ分析に時間を費やしますね。球団からデータが支給されるので、対戦相手の1番から9番打者の得意、苦手なコース、球種を頭に叩き込まなければいけない。テレビゲームをやっているような感覚です。データ通りのコースに投げたら、痛打されてもコーチに怒られない。逆に抑えても相手の得意なコースに投げていたら注意されますね」 データ重視の野球で、求められる選手も変化している。メジャーはデータで配球を組み立てるため、捕手はリード面よりブロッキング技術、強肩などが重視される。 「勝つための最適解」を効率良く追い求めると、目指す野球の指向性が画一化されていく。17年ごろからメジャーを席巻した「フライボール革命」は代表的なケースだろう。ゴロを転がしても守備シフトでアウトになる可能性が高いため、長打率が重視されるようになり、下位打線の打者もフライを打ち上げるアッパースイングに。日本でもこの理論が普及したが、在京球団の打撃コーチは渋い表情を浮かべていた。 「全員が本塁打を打てるわけではないのに、勘違いして振り回す打者が増えました。今の若い選手はYouTubeで得た情報をすぐに取り入れるので、指導が難しい。打率.220、10本塁打でフライアウトが多い選手より、打率.270、5本塁打で進塁打や犠打をできる方が投手にとって厄介だし、試合に起用してもらえると説明しても、数値化できないので納得していない時がある。データを取り入れるのは重要ですが、自分に合うか考える能力が選手に求められていると思います」 科学的トレーニングの質が上がり、進化が顕著になっているのは投手だ。150キロ以上の直球を投げる投手が珍しくなくなり、打者は剛速球を打ち返す力強いスイングが求められている。野球のレベルは10年前、20年前より間違いなく上がっている。一方で、「チームの個性が薄まって野球がつまらなくなっている」という声が聞かれる。