“J3の沼”から抜け出せず。二兎を追った山雅で選手の確かな成長は見られたが、勝ちを拾うしぶとさ、したたかさに欠けたのも事実だ
ふたを開けてみるとスタートダッシュに失敗
J3で2年連続3位のカターレ富山に、4位の松本山雅FCが挑む格好となった12月7日のJ2昇格プレーオフ決勝。順位的に下の山雅が悲願のJ2復帰を果たすためには、何としても勝利をもぎ取るしかなかった。 【画像】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介! 「勝った方が上に行くというのは、むしろ分かりやすい状況」と35歳のボランチ山本康裕も前向きに語っていたが、攻守に安定感のある富山からいかにしてゴールを奪って勝ち切るか。霜田正浩監督らはその術をこの1週間、徹底的に模索して、富山県総合運動公園陸上競技場に乗り込んだはずだった。 その成果もあって、前半のうちに安永玲央と樋口大輝がゴール。2-0で試合を折り返した時点では圧倒的優位に立っていた。 しかし「サッカーは2-0が一番難しい」と言われる。その通り、後半の山雅は消極的になり、一方的に押し込まれ、ラスト10分を切ったところで左クロスから碓井聖生に1点を返された。 ただ、この展開は2014年11月1日にJ1初昇格を果たしたアビスパ福岡戦とほぼ同じ。10年前のあの日も雨が降り、熱狂的なサポーターが駆け付けた。今回の富山戦も2-1のままクローズさせられれば、それで問題なかったはずだ。 実際、霜田監督も空中戦で勝負してくる富山の攻撃を想定。87分にベテランの橋内優也や長身DF常田克人ら3枚を投入。1点リードを守り切る覚悟を見せたが、後半ロスタイムにまさかの出来事が起きる。 相手キャプテンの吉平翼が蹴り込んだ右クロスから碓井がヘッド。橋内とGK大内一生が競りに行ったが、相手が頭一つ上回り、ゴールが決まってしまったのだ。 これで2-2。まるで「ドーハの悲劇」を彷彿させるかのような幕切れで、山雅の4年ぶりJ2昇格の夢は潰えた。 「2-0から3点目を取りに行く。あるいは1点を守り切る。引き分けはダメだということは分かっていたので、3点目を取りに行きかったし、2-1でクローズさせたかった。クローズさせる方法もずっと準備してきましたけど、それでやられてしまったので、彼らが僕らを上回ったと思います」と、指揮官は試合後の記者会見で悔しさを押し殺した。 だが、こういった試合運びのまずさは霜田体制の山雅ではしばしば散見されたことだった。 2023年1月に就任した霜田監督は選手個々の成長を促し、ボールポゼッションしながら勝てる集団を作ろうと懸命に取り組んできた。レノファ山口FC時代にオナイウ阿道、宮代大聖ら未完成のタレントを大きく伸ばした実績もあったから、期待は非常に大きかった。昨季は山口時代の教え子である小松蓮をJ3得点王へと引き上げるなど指導力を発揮したが、結果は9位。勝てるチームは完成しなかった。 そこで勝負と位置づけた今季は、J1で実績のある山本、高橋祥平、馬渡和彰といったベテランを補強。小松の抜けた穴埋めには、やはり山口時代の秘蔵っ子である高井和馬を獲得。さらに昨季の奈良クラブで16得点の浅川隼人、SC相模原で10得点の安藤翼も迎え入れた。そこに主軸だった菊井悠介や野々村鷹人らを組み合わせれば、確実に自動昇格できるチームを作れると見られた。 けれども、ふたを開けてみると、序盤10試合を3勝4分け3敗とスタートダッシュに失敗。4月6日のツエーゲン金沢戦で6失点大敗した時点では霜田監督の解任論も高まった。クラブは「まだ立て直せる」と判断し、大ナタは振るわなかったが、そこからもベストな攻守のバランスを見出し切れずに苦しんだ。 「引き分けの数が多すぎた。勝っているのに勝ち切れない、守り切れない、最後の最後で追いつかれてしまうような試合が、引き分けの総数のうち半分くらいになってしまったと思います」と、霜田監督は改めて振り返っていたが、リードしているのに追いつかれたり、逆転されたりというのが多すぎた。結果的に連勝が続かず、ポイントを上積みできなかった。
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