デニムティアーズの デジタル製品パスポート 戦略、偽造品対策と顧客体験の向上
記事のポイント デニムティアーズが偽造品対策と顧客信頼構築のため、製品にQRコードを活用する。 データ活用でブランド価値向上が期待される一方、小規模ブランドでDPPの導入が遅れる。 2027年までにDPP義務化が決定し、グローバル対応の必要性が指摘される。 シュプリーム(Supreme)でクリエイティブディレクターを務めていたトレメイン・エモリー氏が2019年に創業したアパレルブランド、デニムティアーズ(Denim Tears)は、偽造品に対処し、顧客からの永続的な信頼を築くために、デジタル製品パスポート(以下DPP)に大きく賭けている。 12月4日に発表されたデジタルパスポートプラットフォームのイオン(Eon)とスニーカーマーケットプレイスのストックX(StockX)との提携を通じて、同ブランドは新製品のそれぞれにQRコードを組み込むことになる。そのコードをスキャンすることで、消費者は製品の真偽を確認し、ライフサイクルを追跡することができる。 DPPがファッション業界に普及するなか、その採用や拡張性、業界の準備態勢についての疑問が残されている。 デニムティアーズの戦略および成長担当ディレクターであるマイルズ・ウェドル氏は、模倣品がより巧妙になっているなかで、顧客が安心してデニムティアーズの製品を購入できるようにすることが同社の目的だと述べている。 デニムティアーズの製品は、150ドル(約2万2800円)のスウェットシャツから、デニムティアーズ × リーバイス(Levi’s)のジーンズのような、825ドル(約12万5600円)のリミテッドエディションのコラボアイテムまでと幅広い。そして、そのアイテムは再販市場で人気がある。 2020年以降、70以上のブランドがイオンのテクノロジーを導入している。そうしたブランドには、コーチトピア・バイ・コーチ(Coachtopia by Coach)、H&M、アウターノウン(Outerknown)、パンガイア(Pangaia)、クロエ(Chloé)、ネッタポルテ(Net-a-Porter)、ナヌーシュカ(Nanushka)などがある。 しかし、DPPの導入は依然として遅れており、特に小規模なブランドでは、DPPを高価または不要と考えているようだ。イオンは一般的なコストついては明言を避けた。 それでもDPPには明確なメリットがある。すなわち、ブランドはDPPを利用することで、販売価格やセルスルー率、販売場所、状態など、商品に関するデータを収集できる。ブランドは店頭と再販市場の両方で、商品のパフォーマンスを追跡することが可能になる。 「ブランドと再販プラットフォームをつなぐこのデータパイプラインは、これまでには存在しなかったレベルのコラボレーションを生み出す」と、イオンのCEO、ナターシャ・フランク氏は述べている。 ブランドはまた、顧客が商品を再注文したか、レビューを残したか、商品を友人に勧めたかなど、顧客のエンゲージメントも追跡できる。このような顧客とのインタラクションデータは、ブランドがオーディエンスをよりよく理解するのに役立つインサイトに新たなレイヤーを追加するだろう。 「販売後のデータによって商品を最適化し、顧客のためによりパーソナライズされた体験を作り出し、我々の活動を継続的に改善することができる」と、ウェドル氏は言う。混雑した市場において、このような消費者との直接的なつながりは大きな差別化要因となりうる。 この技術は大きな可能性を秘めているが、その普及は規制の変更によって促進される可能性が高い。欧州連合(EU)のDPP法では、ブランドは2027年までにデジタルパスポートの導入が義務づけられている。ファッションはこうした規制の下での優先分野だが、特に多様な生産システムを持つグローバルブランドにとって、導入プロセスが複雑になると考えられる。 多くのブランドはコンプライアンスの期限を守るためにサプライチェーンを見直す必要があり、それはEUを拠点とするブランドだけの問題に留まらない。 ストックXのブランド保護責任者であるポール・フォーリー氏は、「ブランドにとって、これを欧州向けの製品に限定するのは難しくなる」と述べた。「DPPをすべてのグローバル製品に導入する方がずっと簡単だ。EUが主導しているとはいえ、その影響は世界中におよぶことになるだろう」。 [原文:Fashion Briefing: How Denim Tears is getting ahead of fashion’s digital product passport era] ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:坂本凪沙)
編集部