更年期世代が気になる老化 カギとなる年齢とは 老化に抗うための食養生を聞いた
鏡を見たときにシワやたるみが気になったり、ふとしたときに足腰が痛くなったり――。以前と比べて老けたと感じることがあるかもしれません。先人の知恵が詰まった薬膳では、体に変化が訪れる節目の年齢が周期的にあるそう。更年期の女性の元気をサポートする、国際中医薬膳師のかみむら佳子さんによる連載。今回は、いつまでも健やかで若々しくいるための食養生をお届けします。 【画像】老け見えしやすい冬 体の内側から老化に抗うために取り入れたい食事の一例 ◇ ◇ ◇
女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢が節目
薬膳の基盤となる中医学では、女性は「7の倍数」、男性は「8の倍数」の年齢のときに、体に大きな変化を迎えるとされています。中国最古の医学書として知られる「黄帝内経」に記されている考え方です。 たとえば女性に関しては、7歳で永久歯が生え、髪が伸び始め、14歳で月経が始まります。21歳で体が成熟し、28歳で女性として最も充実した時期に。35歳になると顔や髪に老化の兆しが現れ、42歳ではシワや白髪が目立ち、49歳で閉経を迎えるなど、7年周期で節目の年齢があります。 一方、男性は8の倍数の32歳で体が最も充実しますが、40歳から体力や髪の衰えを感じ始めるといわれています。48歳で白髪が目立ち、56歳で筋肉が衰え、生殖機能の弱りなど体が老化。64歳で疲れやすく不眠になりやすいと記されています。 最近は男性の更年期も注目されるようになってきましたが、現代の女性を考えると、35歳以降は女性ホルモンの分泌量が減少する、いわゆる「プレ更年期」に入る時期。50歳前後が閉経の平均時期で、閉経の前後5年の10年が「更年期」です。個人差はありますが、振り返ってみれば、それぞれの倍数の年齢に体の変化を感じたことがある方もいるかもしれません。 とくに心身のバランスが揺れやすい更年期世代は、体の変化を年齢サイクルでとらえる「先人の知恵」を意識して、ご自身の状態と向き合ってみてはいかがでしょうか。
更年期世代は「腎」を補う食養生がカギ
薬膳では、このような年齢サイクルで起こる老化に対抗するため、体内の主要な働きを司る五臓(肝、心、脾、肺、腎)のうち「腎」を補うことがカギとされています。中医学での腎とは、生命力、成長、生殖を司り、膀胱、骨、耳、脳、髪に関係する臓器です。さらに人間の生命活動を支えるエネルギー源「精(せい)」も蓄えられていると考えられています。この精は、成長や発育、生殖活動に関わり、体の元気の源となるものです。 つまり、加齢によって腎が衰えてくると精も消耗し、排尿障害や骨折、足腰の弱り、難聴や聴力の低下(耳が遠くなる)、白髪、脱毛、物忘れといった老化現象を招くといわれます。これらの衰えを食い止めるために、薬膳では「腎を養生し、精がつく」食養生の実践をすすめています。たとえば、山の芋やカキ、ウナギなど、腎を補う食材を取り入れてみましょう。 山の芋には大和芋、長芋、自然薯などがあります。漢方では、腎の機能低下である「腎虚」の症状に対応する山薬(さんやく)という生薬として使われています。カキは、ミネラルやビタミンなどが豊富なことで知られ、腎機能を高めてくれる食材です。ウナギは、スタミナ食として今も夏の土用の丑の日に食べる習慣がありますが、天然ウナギの旬は冬。脂が乗っていておいしい時期なので、機会があれば、ぜひ旬の天然ものを食べたいところです。 冬は、寒さで腎が弱る時期でもあります。旬の食べ物でパワーチャージをしながら腎をいたわりましょう。日々の積み重ねが、次の年齢サイクルの節目につながります。より健やかで充実した年齢の重ね方になるように、薬膳の知恵を生活に取り入れてみてください。
かみむら 佳子