ドラフト指名されなかった君へ「2度指名漏れから1位」ヤクルト・吉村貢司郎の金言…「悔しさを生かすも殺すも自分次第」「諦め悪いですね(笑)」
今年も行われたドラフト会議。プロ野球選手の夢を叶えた歓喜の一方で、最後までその名を呼ばれなかった選手たちがいる。屈辱、挫折、諦観、涙……。「指名漏れ」のリアルと、その悔しさをバネにした男の物語とは。2度の「指名漏れ」を経験しながら、2022年ドラフト1位でヤクルトに入団。今季ローテーションの柱としてチーム最多の9勝を挙げた吉村貢司郎投手に聞いた。 【写真】「いやー、いいメンバーなんだけどなー」と言いたくなる、力投吉村、村上・オスナのホームラン、長岡の華麗な守りほかスワローズナインを見る 2019年10月17日。吉村は横浜市の國學院大学の施設でテレビ中継を見つめていた。最前列で肩を並べていたのは、いずれもプロ志望届を出していた横山楓(現オリックス)ら投手2人、野手2人のチームメート、そして吉村。後ろには野球部員が顔を揃え、集まった記者やカメラマンと共に、歓喜の瞬間を今や遅しと待ち構えていた。 佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥(オリックス)……。「黄金世代」の高卒投手たちが1巡目で華々しく名前を呼ばれ、ウェーバー方式となる2巡目、3巡目は粛々と各球団の指名が続いていく。 4巡目、5巡目を過ぎても吉村の名前はない。育成指名も含め計107人の名前が上がったところで残ったのは「指名漏れ」という現実。吉村だけではない。指名を待っていた同じ4年生の5人は誰一人、名前を呼ばれなかった。
気まずくはなかったけれど、申し訳なくて
「気持ちよく、全員呼ばれなかったですね。だから、逆に気まずくはなかったです。記者も結構集まっていましたが、バラバラと帰って行きました。申し訳なかったですよね。せっかく来てくれたのに」 吉村自身、そこまで大きな落胆はなかった。秋のリーグ戦直前に、右肩に違和感を覚えていた。ドラフト直前という焦りやチームの状況を考えて騙し騙し登板はしていたものの、痛みは消えていなかった。 「若干の期待はありました。調査書は何球団かいただいていましたし、プロに行きたいという思いもありました。でも全然アピールできていなかったので本当に難しいだろうなとは思っていて……色々な気持ちがありましたね」 前年の2018年ドラフトでは1学年上の清水昇がヤクルトから1位指名を受けていた。1年秋からエースの重責を担い、通算43試合に登板。大学日本代表にも選ばれていた右腕の姿を見ていただけに、自分に足りないものを痛感していた。 「清水さんは何でも出来て1つ1つ全てが他とは違う、という存在でしたけど、僕は器用でもないしセンスもない。コントロールも悪かったし、スピードもそこまで速くない。全てにおいて成長しなければ、上位で指名なんてかからないと自分でも思っていました。そのために、圧倒的な成績を残さないといけない、って」 仲良く指名漏れしたチームメートとは、「社会人に行って絶対にプロになろう!」と誓い合った。そうして吉村は社会人野球の名門・東芝に進み、一からピッチングと向き合う覚悟を決めた。右肩痛の影響で1年目はマウンドに上がる機会も少なかったが、その分リハビリやトレーニングの過程で体作りや投球フォームの改善に取り組むことができた。 「不安もあったけれど、やるしかない。もう二度と同じ怪我はしたくないとも思っていたので、投球フォームも色々と試行錯誤した中で“振り子”に辿り着きました」 セットポジションから左足を振り子のように大きく振ってから投球動作に入る“振り子投法”。今シーズン途中まで吉村の代名詞だった投球フォームは、この時期に作られた。ストレートの平均球速は4、5km上がり、マウンドを重ねるごとに自信を身につけていった。
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