<緊急解説>韓国が非常戒厳令、尹大統領が出した最悪の悪手、その理由と朝鮮半島で起こりうる最悪のシナリオ
2度目の大統領弾劾に突き進む韓国情勢
尹大統領による非常戒厳の宣布を読んで、何を感じただろうか。 筆者は率直に言って、30年以上にわたって北朝鮮スパイと対峙してきた経験から、韓国の進歩派の中に北朝鮮の手先がいることを否定しないし、その害悪の大きさも知っている。しかしながら、それを加味したとしても非常戒厳の宣布は暴挙だし、尹大統領自身が民主主義を破壊したと言っても過言ではないと考える。 韓国の国会は3日深夜、在籍議員190人が急きょ集まり、非常戒厳解除要請案を全員一致で可決した。この中には、尹大統領を擁立する与党「国民の力」の議員も含まれる。身体を張って民主主義と国家を守る議員や関係者を前に、出動した若い軍人たちはなす術もなく待機するしかなかった。 そして、4日午前4時過ぎ、尹大統領は戒厳法の規定に従い、戒厳を解除した。筆者は、野党=北朝鮮の手先と認識する尹大統領が国会の要請を受け入れない可能性を懸念したが、そのような最悪の事態は避けられた。 いずれにしても、韓国社会が受けた痛手は大きい。支持率低迷と国会対策の失敗を戒厳令で乗り切ろうとした尹政権と保守派の信頼は完全に失墜し、2回目の大統領弾劾も現実味を帯びてきた。他方、野党と進歩派がこれから勢いを盛り返すことで、尹政権下で進んでいた日米との連携強化が無に帰する。 現時点で筆者が考える最悪のシナリオは(1)尹大統領の弾劾・逮捕、(2)米国でトランプ政権、韓国で李在明政権が誕生、(3)在韓米軍の撤退、(4)北朝鮮の南侵と第2次朝鮮戦争の勃発――という流れだ。これを妄言と笑い飛ばせないほど、今回の事件の影響は大きい。 当面は韓国情勢をウォッチするとともに、情勢の悪化が日本と政界の安全保障環境に波及しないことを祈るほかない。
吉永ケンジ