NMB48 安部若菜「アイドルは“夢ハラスメント”を受けている」現役アイドルが芸能スクールを舞台に描く、理想の居場所とは?【インタビュー】
意識して生々しく描いたセンシティブな友情
――登場人物たちの「友情」みたいなものもすごくセンシティブに描かれていますね。心の距離が近づいても、あくまでもライバルというピリッとした何かがあって。 安部:ただの仲良しこよしにはならないし、やっぱり5人いたら、「この子とは仲良いけど、実はこの子はちょっと苦手」みたいなのもすごくあると思うので、そのあたりは意識して割と生々しく描きました。私は普段NMB48のメンバーと話すことが一番多いんですが、数年間ずっと一緒に夢を追いかけるような場所にいても、それでもやっぱりそれぞれ人には言えないこともありますし、腹を割って話しているようでも、私だって他のいろんな思いを抱えていたりしますから。やっぱり羨ましいとか嫉妬とか、そういうのだってずっと底の部分にはあると思いますし。 ――本音をさらけ出し合うのが理想なわけじゃないですけど、ちょっとさみしい? ご自身にとって「理想の友情」ってどんなものだと思いますか? 安部:私は全部話すのがいいこととも思わないですね。話せないことがあって当たり前だし、それこそ人によって、この人にはこっちの方面話せるけど、この人にはこっちの方面とか、割り振られているぐらいが一番ちょうどいいのかなと思います。 ――とはいえ、やっぱり孤独よりは誰かとつながっていたいというか。物語の彼らも最初こそライバル視バリバリでみんな孤独だけど、だんだんゆるくつながっていく。その空気感って悪いもんじゃないですよね。 安部:そうですね、一人でがんばって成長していく部分もあるんですけど、人と関わることで自分が変えられていくっていうのが一番大きいと私も感じています。人との関わりによって変わっていくけど、ただそれでもやっぱり孤独な自分もいるっていうのを、書きながらあらためて思いました。人と関わることっていいよなっていう部分もありつつ、でもそれが全てじゃないよなって、ある種の諦めみたいな感じというか。 ――その諦観、伝わってきました。やはりアイドルっていうお仕事は厳しい面もあるじゃないですか。だからすごく安部さんの視点は「大人」なのかな?って思ったんですが、自覚はありますか? 安部:なんかすごく自分自身を俯瞰で、いつも引いて見ちゃうタイプなような気はしてます。 ――確かに! だからこそ小説も書けるんだろうなって思いました。 安部:嬉しいです。結構アイドルしていると、俯瞰で見るのがあんまり役に立たないことが多いので。例えばダンスの先生から「もっと自分が前に出るっていうのを出して!」みたいによく怒られることもあります。 でも小説を書いてみて、そういうアイドルとして活かせなかった自分の部分をちょっとうまく出せているかなとは思っています。だから小説を書くのが楽しくて、日常であったいろんなことを「これいつか使いたいな」とかメモしたりしています。