NMB48 安部若菜「アイドルは“夢ハラスメント”を受けている」現役アイドルが芸能スクールを舞台に描く、理想の居場所とは?【インタビュー】
NMB48の現役アイドルでありながら、小説家として処女作『アイドル失格』が大きな注目をあびた安部若菜さん。このほど2冊目となる小説『私の居場所はここじゃない』(どちらもKADOKAWA)を出版することになった。どのような思いを物語にこめたのか、お話をうかがった。
「芸能スクール」を舞台にアイドル経験を活かして描く
――まずはこの物語を書こうと思ったきっかけから教えてください。 安部若菜さん(以下、安部):1作目の『アイドル失格』では自分のアイドル経験を思いっきり詰め込んだ話を書きましたが、2作目をどうするかすごく迷ったんですね。やっぱり自分のアイドル経験はどこかに活かしたいと思ったので、それで「芸能スクール」を舞台にしようと決めて、そこから「夢」を目指す物語にしました。 夢というのは自分の中でもすごく大きなテーマで、「アイドルになりたい!」と思ってオーディションを受けて夢を叶えたものの、実際になってみたその先でいろいろ思うところがあって。なので、夢の明るい面とちょっと暗い面と両方を描きたいと思ったんです。 ――良い面と暗い面とは、例えばどういうことでしょう? 安部:ライブはもちろん「アイドル」としての一つ一つの仕事はとにかく楽しくて幸せなんですが、一方でいつも「アイドルを卒業した後のこと」を見据えて活動しなくちゃいけないところがあって。 私はただアイドルになりたかっただけなので、その次の夢なんてそんなにポンポン出てくるものじゃないし、でも「夢を持たなきゃいけない!」「何者かになれっ!」みたいなプレッシャーがずっとあって。夢ハラスメントみたいっていうか。ずっと「夢って何なんだろう?」って思っていたので、そんな気持ちがこの本には活かせたかなと思っています。 ――物語では「オーディション」が特別な場所への切符のような象徴的な存在になっています。確かに受かったことがゴールじゃなくて、問題はその先なんですよね。 安部:この物語は「夢を追いかけている子たち」の物語なので、彼らは必死にそこに向かっているんですけど、それでもふとした時に、本当に夢を叶えた先は自分の居場所なのかなっていう不安を持っていると思うんですね。「夢を追いかける」という時は「叶えること」がゴールになっているので、夢は良いものとして語られることが多い気がしますが、ほんとはそんなこともないかなっていう。夢がキラキラしすぎていても、それはそれでしんどいよなと思って、そんなに夢を追いかけなくてもいいんだよっていう気持ちも込めました。 ――オーディションで勝ち取った先が「居場所」なのかどうか。この本のタイトルにも「居場所」とあります。かつては「自分探し」と盛んに言われましたが、今は「居場所探し」の時代なんだなって思いました。 安部:そうですね。私は高校時代に一時期不登校になったんですけど、その時に「学校に無理して行かなくてもいい」って言ってもらえたし、昔よりは自分の居場所を自由に選べるようになってきているんだと思います。 でも自由になったからこそ、自由すぎるからこそ、「今いる場所」が本当にあっているのか、もっと別のとこも選べるけどいいのかみたいな、自由がゆえに居場所が不安定になっている部分があるのかもしれません。 ――居場所を勝ち取るためにいろいろ努力はするけれど、今の「自分」そのものは保全したままで、居場所を変えればなんとかなるって信じる感じは少し気になりました。 安部:同世代の子を見ていても、自分が場所に染まるっていうよりは、自分にあう場所を探すっていう方がメインになってきている感じがすごくします。SNSで情報も山ほど入ってくるので、他の場所のこともいろいろ見えてきますから。自分も他のグループが魅力的に見える時があったりしますし、やっぱり情報が多いからなんだと思います。