非人道的な拷問によって「壊された」女性…「数か月ぶり」に見る自分の姿に思わず嘔吐
イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。 世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行にあたって、内容を一部抜粋、紹介する。 『白い拷問』連載第26回 『「9年の独房生活」で悟った《独房の定義》…生き地獄のような環境で「当然のように鬱になる」』より続く
7ヵ月ぶりに家族と面会
語り手:マフバシュ・シャリアリ マフバシュ・シャリアリ(1952年、イスファハン州アルデスタン郡ザバレ地区生まれ)は2008年3月5日にマシュハドで逮捕され、20年の禁固刑を科された。2017年9月18日、刑法134条(複数の刑で有罪となった人物は、最も重い罪状に科された刑期だけ服せば良い)の申請が認められ、釈放された。2006年、彼女は暫定のヤラン(ペルシャ語で友という意味)委員会メンバーに選ばれ、他の6人の代表メンバーとともにイランのバハーイー教コミュニティに関わる運動をしていた。マフバシュは逮捕されるまで、この組織の委員長だった。 ――いつ、そしてどのように、心身のダメージに気づきましたか? テヘランでほぼ7ヵ月ぶりに家族と面会したとき、不思議な感覚になりました。家族に会えるぞと言われたとき、私は固まってしまい、心がぴくりとも動きませんでした。他人事と言ったほうが良いでしょうか。何も感じませんでした。私は弁護士の面会場所、のちに罪状が読み上げられる場所に連れて行かれました。 そこには尋問官もいて、大きい窓のそばに座っていました。窓は刑務所内の木が生えているエリアに向かって開いていました。私も座って外を眺めました。私はチャドルを着て、ものすごく大きな男性用のゴムサンダルを履いていました。期待や嬉しさといった感情はありません。頭のなかは真っ白で、何の感情も湧かず、ただじっと静止していました。