【特産品を守る事業】目の前のことを一つひとつ大切にする|田口愛のサステナブック
私なりのサステナビリティ
――田口さんはチョコレート好きが高じてカカオの産地であるガーナを訪れたわけですが、当初抱いていたイメージとのギャップなど、ガーナで印象に残っているエピソードはありますか? 「チョコレートが好きでガーナに来た」と言えば、現地の人たちとすぐに仲良くなれると思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。カカオ農家さんは、カカオがチョコレートになることは知っていても、チョコレート自体が販売されていない地域もあるので、食べたことがない人もいるんです。それが現地でチョコレート工場を立ち上げるきっかけとなりました。 そして、想像していたよりもガーナの人たちは明るかったですね。アフリカの情報は、貧困問題など大変な部分が強調されがちですが、現地の方々は今あるものに感謝しながら幸せに暮らしています。 現地を訪れるまでは「アフリカ=貧しい」と思っていたのですが、「貧しい」とは金銭的・物質的な側面の一部に過ぎず、精神的な豊かさがあることに気づかされました。カカオ産業のだけでなく、彼らの素敵な部分も伝えていきたいと思っています。
――日頃から取り入れているサステナブルなアクションはありますか? 直接的なアクションとは言えないかもしれませんが、購入する物の背景を調べるようにしています。どのような人が関わり、どの国を経由して私たちの手元に届いているのかを知ることで、より深くその物の価値を感じられるからです。 例えば、カシューナッツは「インド産」と記されていることが多いですが、実際にはガーナで採れたものが加工のために他国を経由している場合があります。このように背景を知ることで、ガーナ現地でできることの可能性についても考えられるようになります。 物の背景に目を向けることで、消費者としての判断材料が増え、身の回りの物をより深く理解するとともに、世界中の人々とのつながりを感じることができます。 ――サステナビリティについて、何から始めればよいのかわからないという方にアドバイスはありますか? こうしたメディアの記事を読むことも、サステナビリティへの第一歩になります。その次のアクションとして、学んだことを周りに伝えてもらえると嬉しいです。エシカルな商品を選ぶことが理想ではありますが、すべてをエシカルなものにするのは現実的には難しいかもしれません。まずは世の中にある課題や問題を知り、仲間を増やすことが大切だと思います。 ――今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか? 物を購入したり支援したりするだけで終わりではなく、自分が起こしたアクションに対して、その後どうなったのかを見届けることが大切です。そのためには、継続して情報をキャッチすることを心がける必要があります。私も引き続き情報発信に努めていきたいと考えています。 また、目の前に困っている人がいれば、手を差し伸べることも必要ではないでしょうか。一つひとつ目の前のことを大切にすることから、サステナビリティが始まると思います。