投票に行かなくなったのは中高年。これからの選挙のあり方を考える
── すでに選挙以外の新しい政治参加の動きが起こっている地域があるんですね。 こういう新しい動きは、人口減少や高齢化によって存続の危機を強く実感している自治体を中心に生まれています。長野県飯綱町議会の「政策サポーター制度(市民と議会が協働して政策づくりをすすめる制度)」や北海道芽室町・栗山町議会の「議員モニター制度(議会運営に市民の声を反映する制度)」など、市民を交えた合議制の取り組みについては総務省もモデルケースとして提示しているので、ほかの地域にも広がっていくでしょう。 Uターンしたり地方移住した若者が議会に参加して地域を変えていく例もよく見聞きするようになりました。 地方でこういう経験をする若者が増えて、彼らの発信を受け取って自分の地域との差を感じる若者が増えたら、その先にある選挙にも自然に目が向いてくる。そういう順番がいいのではないかと思うんです。
投票率上昇は、より多様な人が政治に納得感を持てる社会になること
── 地方から若者と政治の新たな関わり方が生まれているのは希望が持てますね。若者たちの政治参加は社会にどのようなポジティブな変化をもたらすと考えますか? いい社会というのは、なるべく多くの人、なるべく多様な人が納得感を持てる社会であることだと思うんです。 そのためにあるのが選挙。だから選挙は、多くの人が関わって結果が出ることが大切だと思います。たとえ結果が同じだったとしても、30%の人しか投票していない選挙で生まれた政権が決めた政策より、さまざまな年代・性別・属性を含む多くの人が投票して決まった政権の政策のほうが納得して受け入れられるでしょう? 個人的には、投票率は60~70%くらいがちょうどいいと思っていて、このくらいあれば、選挙に行かなかった人にとっても社会全体の意思表示で決まった結果だという納得感が生まれると思うんです。
また、7割程度の人々が投票して結果が出れば、選ばれた側の政治家にも緊張感や責任感が生まれ、それがより多様な声を拾い上げた政策につながると思います。 ── 選挙に行く、ということは、みんなの納得感が高い社会をつくることなんだと思いました。 今は投票する前から結果がわかりきっている選挙も多いので、より自分の一票の価値を信じられない、行っても無駄だと感じている人は多いと思います。人にさんざん「投票に行こう」と言い続けてきた私ですら腰が重い選挙もあるくらいですから。 でも、「政治の現場は少しずつ変わり始めているよ」と伝えたい。地方議会が変わりはじめ、若い議員や首長も続々と誕生しています。若い政治家を支援する年配の人も増えています。政治の現場に若い人が増えれば、制度も変わっていき、よい実例はほかの地域にも派生して広がっていくでしょう。今はその過渡期です。地域や政治に関心がある若者にとってはおもしろい時代ですし、それが若い人の投票率にもつながるのではないかという希望があります。 投票は、未来の自分たちの生活に返ってきます。毎回行かなくてもいい、3回に1回でもいい。ため息をつきながら、選挙に付き合い続けてほしいです。
取材・文 : みやじままい 撮影 : 川上守 取材・編集 : 小山内彩希 編集 : くいしん