投票に行かなくなったのは中高年。これからの選挙のあり方を考える
── たしかに中高年層の投票率の減り幅が大きいですね。2023年の埼玉県知事選に至っては、50~70代の投票率が10ポイント以上も下がっている。 これまで選挙に行っていた年齢層の投票率が大きく下がったことで、2023年の埼玉県知事選は全体の投票率も23.76%と全国過去最低を記録しました。この現象は埼玉に限らず日本のあらゆる地方で起こっていて、これまで投票率が高かった地域ほど加速しています。 そして、少し遅れて国政選挙でも同じ傾向が出てきている。最近の選挙の投票率って50%くらいのことが多いでしょう? ── それでも年配の人は投票に行くイメージだったので、正直びっくりです。どうしてこんなことになっているんですか? 地域社会が無縁化したからだと思います。かつては選挙ってお祭りみたいなもので、地元で付き合いがある人をみんなで応援して議会に送り出すものだった。それによって地域に雇用が生まれるなどのリターンもあったわけです。 でも今は選挙にそこまでの力はない。1994年に中選挙区制から小選挙区比例代表制が採用されて、人に投票する選挙から政党に投票する選挙に変わったのも大きいと思います。
2000年代以降、特に投票率が上がらなくなっているのは、「自己責任論」が広まり、近隣の人同士で頼り頼られるような関係性が減ったことも影響しているように感じます。 かつては、よく言えば「つながり」、悪く言えば「しがらみ」を前提に成り立っていた選挙が、地域のエネルギーが減少したことで機能しなくなった。地域の祭りや消防団の運営でも同じようなことが起こっていますよね。 また、昔の60代と今の60代を比べたときに見た目が若くなったのと同じように、中高年のメンタリティも若者に近くなっているのではないかと感じます。これは、新聞の購読率の減少とも相関性がある気がしていて、かつては社会人になったら新聞を読むのが一般的でしたし、読まないと営業先の会話に困ったものです。でも今は違います。自分の好きな情報だけ見ていても問題なく暮らせる社会になったことも投票率に影響しているのではないかと思いますね。