「犬連れ登山」は是か非か “犬お断り看板”の実態を探る
「ご遠慮ください」根拠は不明
霧ヶ峰高原がある諏訪地方は、7年に1度の『御柱祭』でも有名だ。山でモミの木などの巨木を切り倒し、麓の諏訪大社まで人力で引くという地域を挙げての大祭。かつてその「御柱」となる木を切り倒した森の一つが、今は初心者でも楽しめる『御柱の道トレッキングコース』として整備されている。白樺湖と女神湖の間にある県道脇の入口には、立派なコースマップの看板が立っている。そこに5項目からなる注意事項が書かれているのだが、その一つが「ペットを連れての入山はご遠慮ください」というものだ。 犬連れで山を歩くこと自体を規制する法律はないことが容認派・反対派双方の共通認識となるのに従い、看板にも以前は見られた「禁止」という強い強制力を示す文言はほとんど見られなくなっている。長野県東部の国有林を管轄する東信森林管理署では、10年ほど前に犬連れ登山を楽しむ市民団体から禁止をうたう“犬禁看板”について公開質問状を受けたことをきっかけに、管内の国有林で実態調査を行った。その結果、「禁止」をうたうなどの古い看板が数多くあったため、撤去または内容の修正を行った。 実は、『御柱の道トレッキングコース』の看板には「禁止」に近い文言も書かれているので、以前から気になっていた。「ペットを連れての入山はご遠慮ください」という日本語表記の下に英語で「No pets allowed」と併記されているのだ。辞書を引けば「ペット禁止」「ペット同伴禁止」という和訳が出て来る。共同設置者として看板に名を連ねている立科町の観光課に聞いてみた。 「遊歩道を整備したのは20年余り前です。今ある看板は昨年新しく作り直したものです。近年は外国人観光客が増えているため、英語表記を加えました。あいまいなニュアンスは外国人には伝わりにくいと考え、そのような表記の違いになったのだと思います」。では、実際は「ご遠慮ください」なのか「禁止」なのか。「当該コースは国定公園内にありますが、あくまで地域のローカルルールとしてお願いしています。監視員を置くなどして積極的に呼びかけているわけではありません」。 看板の設置者として同じく名を連ねる蓼科白樺高原観光協会のHPを当たると、『御柱の道トレッキングコース』の紹介欄では、「1. 動植物の採取は厳禁です 2.ゴミはお持ち帰りください 3.コース以外は入山禁止です」と注意事項が書いてあるが、看板にある「ペットを連れての入山はご遠慮ください」は書かれていない。どうやら英語表記とは裏腹にかなり緩い「お願い」なようだ。 「(犬お断りの)根拠は正直申しましてはっきり分かりません。近隣にはペットを歓迎するハイキングコースや自然公園がある一方、古くからご遠慮いただいている所もある中で、従来からの申し合わせに準じる形で明記したのではないかと思います」(立科町観光課)