最近増加する「第三者管理マンション」選びで失敗しないための5カ条とは
管理会社が管理者になるときのルールを整備した2024年版のガイドライン
国土交通省がなぜ、外部専門家に管理会社を想定していなかったかというと、管理組合と管理会社は“利益相反”の関係にあるからだ。たしかに管理会社には管理に関する専門知識があるが、管理業務を発注する側と受注する側が同じになるので、管理組合にとって不利益となる場合も起こりうる。 そこで、国土交通省では、2023年に「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を設置し、実態の把握と課題の解決に乗り出した。 国土交通省が管理業者に対して、同年9月と12月に行った「第三者管理者方式に関する実態調査」では、管理会社のうち35%が管理組合の代表である「管理者」になって管理業務を受託している事例があると回答しており、その場合の多くが、「理事会を設置しない」パターンであることが分かった。つまり、管理会社が管理を丸抱えする方式だ。 さらに、管理業務を行う部署と管理者として業務を行う部署が同じである場合も多かった(「同一の部署であり、責任者も同じ〈42%〉+「同一の部署であるが、責任者が異なる〈18%〉」)。同じ部署で発注と受注の立場にあれば、利益相反のリスクが高くなるわけだ。 そこで、管理会社が外部専門家となる場合に適切なルールに基づいて行われるように改定したのが、2024年版のガイドラインだ。ガイドラインでは、外部管理者方式の中でも、マンション管理会社が外部管理者になる場合を「管理業者管理者方式」と呼んでいる。 ガイドラインでは、管理業者管理者方式の場合のルールを整備している。その中から、一般ユーザーに特にチェックしてほしい5つの項目をピックアップした。
「管理業者管理者方式」でチェックしたい5カ条(ガイドラインから抜粋)
通常の管理業務を受託する場合と管理組合の管理者に就任する場合で、それぞれ委託契約書を分ける。管理会社内で、管理業務と管理者の担当者をそれぞれ分ける。管理者の任期は原則1年程度とする(毎年開催する総会で継続・不再任などの決議を行う)ことが望ましい。管理規約には、管理者として管理会社などの固有名詞を記載しないことが望ましい。利益相反を防止するために、総会で承認を得た金額以上の支出や関連企業との取引については、総会で承認を得る。 ピックアップした5項目について少し説明しよう。2と5は利益相反を抑制するためのもので、1と3と4は管理組合が管理方式を変えたり管理者を変えたりすることのハードルを下げるためのものだ。 1は、管理者を委託する契約書を作らずに、管理業務を委託する際の「マンション管理委託契約書」に管理会社を「外部専門家として管理者に指定する」と盛り込む事例を防止するためのもの。委託契約書を分けないと、管理者だけを変えることはできず、管理業務の委託そのものを解約することになり、管理者を変えるハードルが高くなってしまうからだ。 4は、マンションのルールブックである「管理規約」に、管理者として○○会社を指定するなどと記載する事例を抑制するためのもの。特定の名前が記載されていると、管理者を変えるには、管理規約を改正する必要がある。管理規約の改正は、過半数の普通決議ではなく、4分の3以上の特別決議によることになるので、管理者を変えるハードルが高くなるからだ。 3の任期については、1年ごとに管理者を見直すタイミングを設けることで、任期を定めずに管理者が無条件で継続することを抑制している。 さらに、ガイドラインでは、新築マンションの場合は、購入時ではなく購入を検討している期間に、管理業者管理者方式に関する情報提供項目について、購入希望者に詳しい説明をすることを求めている。