シングルマザー支援に「シェアハウス」(上) 同じ境遇で助け合いも
全国で120万世帯を超える母子世帯は、58.1%が母親の年収200万円未満、43.8%が非正規雇用(2018年、厚労省調査)と不安定な立場にあり、54.6%が相対的貧困に陥っています(2012年、同)。特に住まいの状況は、父子世帯の68%が持ち家であるのに対し、母子世帯の持ち家比率は35%。民間や公営の借家に入るか、実家で親と同居できればまだましで、行き場がなく友人宅などを転々とする母子も少なくありません。 こうしたシングルマザーの生活を「シェアハウス」で支援しようという動きが出てきています。都市部のアパートや戸建てをシェアする取り組みが徐々に広がり、協力する企業や地域が現れる一方、資金や制度面の壁も。試行錯誤する現場から浮かび上がる可能性と課題をまとめます。
駅前立地、広いリビング囲み共同生活
ひとつ屋根の下でキッチンやリビングを共有しながら若者たちがワイワイと賑やかに暮らす――。テレビドラマなどの影響もあり、シェアハウスというとこんなイメージを持つ人が多いでしょう。それが「母子世帯向け」だと、どんな雰囲気になるでしょうか。 名古屋駅から徒歩十数分の住宅地。株式会社リンクリンク(名古屋市中村区)が運営する母子世帯向けシェアハウス「パークリンク米野」は一見、おしゃれな今どきの2階建て住宅です。 玄関から入ると、目の前のリビングは白が基調で明るく広々とした造り。座面が低めのソファーの周りには厚めのマットが敷き詰められ、子どもが安心して寝転べるようになっています。 キッチンも3口のコンロが2台分。そうした共有部分を抜けて2階に上がると、個室はそれぞれ4.4畳と決して広くはありませんが、ロフト付きで5室が用意され、常に満室状態。その入居者すべてがシングルマザーだというのです。 「子どもや将来のことで不安を抱えて入居した人たちが、同じ境遇の人と互いに助け合って暮らします。帰りが遅くなる日も誰かがいるので『ただいま』『おかえり』と迎えられ、さびしい思いをすることがありません」。こう話すのは同社統括マネージャーの神(じん)朋代さん。自身もシングルマザーである経験を生かし、2年前からこのシェアハウスの運営などを通して母子世帯を支援しています。