業務内容も会社も同じだが…65歳以降の収入に圧倒的に差がつく「“半”個人事業主」という働き方【専門家が解説】
シミュレーションしてみよう
具体的にシミュレーションしてみましょう。 “半”個人事業主となった以降は、2日間の余裕時間を営業活動に充当し、まずは1年間かけてもう1社の業務委託契約締結を目指します(61歳時点)。目標とする業務委託料は、月4回(週1回)のサポートで1社月額20万円(=年間240万円)です。 さらに、次の1年間をかけて(62歳時点)もう1社業務委託契約を増やします。これで3年目の売上は673.1万円(193.1万+240万円+240万円)となり、まずこの段階で再雇用の給与水準(322万円)をはるかにしのぐ(2倍!)ことができます。 個人事業主の強みはこれからです。再雇用の場合には、先述の通り、多くのケースで65歳で終了になりますが、個人事業主には雇用のように制度としての終了はありません。65歳以降も、自分が望む限り、体力の続く限り、いつまでも働くことができます。高さではなく面積で稼いでいく戦略です。 雇用であれば本来65歳で終了のところを業務委託契約であるがゆえに継続でき、70歳を超えて続けている個人事業主の方もいらっしゃいます。 65歳以降も長年勤務してきた会社との業務委託契約を継続し、さらに2社の業務委託を継続できたとすれば、673.1万円のベース年収が継続可能です。 さらに、ここから新たにクライアントを拡大してもいいですし、個人事業主の業務内容をコンテンツ化することによって専門領域のセミナー講師として活躍することも十分可能です。
“半”個人事業主となった場合の65歳以降の「支出」はどうなる?
今度は、支出面を見てみましょう。 総務省「家計調査報告(家計収支編)―2022年(令和4年)平均結果の概要」を見ると、65歳以上で夫婦のみの世帯の実収入は24万6,237円、社会保険料などを引いた可処分所得は21万4,426円となっています。 一方、公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後に必要な最低日常生活費は23万2,000円、ゆとりのある老後生活費は37万9,000円となっています。やはり、旅行に行ったり孫におこづかいをあげたりもできる、ゆとりある老後生活を送りたいものです。 そのためには、先ほどの可処分所得から考えると、毎月16万4,574円(37万9,000円-21万4,426円=16万4,574円)が不足します。 この金額ですが、先ほど見た65歳以降にパートタイマー的な仕事にフルタイムで従事した際の給与水準(17万円)とほぼ同額です。もちろん、貯金を取り崩す手もありますが、65歳以降もゆとりある老後生活をフローで収支を賄うためには、65歳以降も毎日8時間働き続けなければいけません。 これが“半”個人事業主戦略をとり、本来の再雇用期間の5年間のうちにクライアントを、仮に2社獲得できれば、673.1万円(=56.1万円/月)の収入を維持できます。個人事業主の場合、時間にリンクした働き方はしませんので、自分で時間をコントロールしながら自分の得意分野で仕事を続け、収入を獲得し続けることができます。 また、個人事業主は厚生年金の被保険者ではありませんので、収入に応じて年金が停止となる在職老齢年金の支給停止の適用もありません(いくら稼いでも厚生年金は全額支給となります)。 木村 勝 行政書士 リスタートサポート木村勝事務所 代表