<上海だより>かげりゆく経済成長、上海は文化都市として成長できるか
「パリっていうのは、特に何かをするために行くんじゃなくて、その空気を楽しみに行くんだよ」 かつて、パリ通の人たちはこのような語り方をしていた気がしますが、実はそれに似たところが上海にもある気がしています。正直、上海という街を観光する上で何かポイントがあるかというと、ブランド品も日本より高く、香港のように夜景を見渡せる丘もないですし、北京のように中国風な歴史建築もほぼありません。そもそも、上海と聞いた時にこれというイメージが多くの日本人にはないのではないでしょうか。一方で、上海という街の歴史を紐解いてみると、意外な魅力を発見することができます。
東洋のパリとも言われた上海租界
上海という街を語る上で重要なのが「租界」の存在です。発端は1842年の南京条約締結で、イギリスとアメリカ、フランスがそれぞれの租界を上海の中に設定し、その後イギリスとアメリカは共同租界を設定し日本もその後加わりましたが、フランスは単独での租界運営を進め、それぞれ19 世紀後半から20世紀初頭にかけて規模を拡大し、第二次世界大戦終戦前後まで約100年続きました。 大規模な新古典主義建築が建ち並ぶことで有名な観光地であるバンドもこの租界の名残ではありますが、現在の上海を語る上で重要なのはその西側一帯に広がる旧フランス租界です。
また、南京条約による上海開港と同時に周辺地域から労働者の移住が多くなり、1853年の太平天国の乱以降には移住者や難民の流入がさらに顕著となったことで、人口増加に対応するために上海租界全体に「石庫門」と呼ばれる中洋折衷型の集合住宅型の建築も多く建てられ、上海の街並みを代表する建築様式となりました。これらの建築は今では「老房子」と呼ばれ、最近ではリノベーションも盛んになり住宅利用以外にも、お洒落なオフィスやカフェ、店舗としても活用され始めています。
ひたすら経済的な急成長を続けてきた上海ですが、ここ数年中国の若者たちにはレトロな雰囲気が再び人気になっています。上海にはこれだけ街全体にレトロな資源が溢れていますから、今後さらにリノベーション物件が増えることで、これまでのバブル一辺倒ではない上海の魅力が増していくのではないでしょうか。まずは空気汚染の問題を解決して欲しいところではありますが、パリのような文化都市、空気を楽しめる街としての成長に期待です。