大根仁が経験した「理想の撮影現場」とは?Netflixシリーズ『地面師たち』制作の背景とともに語る
7月25日よりNetflixにて配信中のドラマシリーズ『地面師たち』。原作は新庄 耕による小説『地面師たち』で、実際に起こった大規模な地面師事件がモチーフだ。綾野剛と豊川悦司のダブル主演、脇を固めるのは北村一輝、小池栄子、ピエール瀧、染谷将太と、日本を代表する豪華俳優陣が出演する本作。現場へのケアも手厚く、大根監督にとってはドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』以降2度目のタッグとなるインティマシーコーディネーターの浅田智穂も制作陣の一人に名を連ねている。 【画像】大根仁 実際の事件をモチーフにしつつもエンタメ作品に仕上がった本作。監督の大根仁と『新聞記者』『シティーハンター』などヒット作を手がける高橋プロデューサーに、俳優陣起用の理由や、制作スタッフや現場への考えを聞いた。 ※本稿は、物語のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
「なぜ大企業の頭の良い人が?」騙す・騙されのプロセスに興味を持った
―大根監督は原作『地面師たち』のあとがきで、小説のモチーフとなった地面師事件の舞台が通勤途中にあり、日々目にしていたと書いていました。事件発覚後、地面師事件に夢中になり企画書をすぐに作成したとか。なぜそこまで地面師に惹かれたのでしょうか? 大根:まずは自分の生活圏内で起きた事件ということが大きいですね。そもそも僕は都会のエアポケットのような場所にすごく惹かれるんですが、原作小説でモデルになった場所は五反田駅のすぐ近くにあるにもかかわらず長年ひっそりと建っていて、ずっと気になっていたんです。そんな場所で大事件が起きたことに驚いて、いろいろ調べるうちに「地面師」という犯罪集団の存在を知り、魅了されていきました。 そして大企業の頭も良いであろう方々がなぜコロッと騙されてしまったのか、騙す側・騙される側のプロセスへの興味もありました。それで、これを映像化したら日本では観たことのないエンタメ性を持った犯罪ドラマにできるんじゃないかなと思い立ったんです。その後、原作小説を読んで、より具体的に企画を立ち上げたという経緯です。 ―戦後の時代から存在していた地面師ですが、その存在が広く知られることになった事件でしたね。あとがきには大根監督が地面師事件をもとにした企画書を各所に持ち込むも、センシティブな題材ゆえになかなか受け入れてもらえなかったとも記されていました。Netflix側が映像化に踏み切った理由を教えてもらえますか? 高橋:原作小説は過去に読んだことがあって、その面白さも理解していたんですが……。じつは大根さんが撮ろうとしているビジョンとドラマの内容が本当にマッチするのか懐疑的だったんです。 地面師のやり口は基本卓上で繰り広げられると思いますが、それを「騙せるか、騙せないか」というスリリングなエンタメとして成立させるのは難しいのではないかと。でも大根さんからは「とにかく一回脚本を書かせてください」とお返事をもらって。 本当にうまくいくのかな……と思いながらいただいた脚本を読んだら滅茶苦茶うまくいってたんです(笑)。見たことがない物語でしたし、演出が端的かつ明確で、キャラクター性もしっかり書き分けられていて、純粋にすごく面白かった。これはNetflixでやりたいとラブコールを送った次第です。