トヨタにホンダ、日産…日本企業は「中国の素早さ」についていけるか?
つまり、中国企業はリスクを取りながら素早く製品を市場に投入し、フィードバックと改善を繰り返しながら、技術や製品の進化を進めてきたわけだ。 ■技術元メーカー車との競合 ふたつ目の課題は、兄弟車でカニバリゼーションを起こす可能性である。日系メーカーは提携先のプラットフォームを活用し、開発期間とコストダウンを実現している一方、同じプラットフォームを使う中国ブランド車と競合することになりそうだ。 長安汽車の「EPA1」プラットフォームで開発されたマツダEZ-6 は、長安汽車「深藍(ディーパル)SL03」の兄弟車であり、広汽AIONのプラットフォームで開発されたトヨタ「鉑智3X(bZ3X)」は、広汽「AION V」の兄弟車である。
一汽トヨタやBYDトヨタなど、トヨタの中国合弁企業とトヨタ知能電動車研究開発センターが共同開発した「bZ3C」は、BYDのEV「宋(ソン)L」と競合する可能性もあるだろう。今後、中国ブランドの兄弟車が値下げすると、日系EVの販売に影響を与えると予測される。 3つ目は、競争力を持つサプライチェーンの構築だ。中国企業の技術や部品を活用して生産された日系EVは、電池やシステムユニットの調達にコストがかかるため、中国ブランド車に対して高いコストパフォーマンスを実現しづらい。
特別な価値や体験を提供できなければ、エンジン車市場で構築したブランド力だけでは、販売増につながらない可能性もある。 またEV部品の開発が求められる日系サプライヤーは、中国市場のスピード感を感じてはいるものの、開発リソースが不足するため、迅速な対応はできていない状況だ。 ハードウェアとソフトウェアの両面で競争力を持つサプライチェーンの構築も、日系メーカーに欠かせないものとなるだろう。 ■変化の速い中国のニーズについていけるか?
中国企業は、EV販売の減速を意識してしても、決して知能化開発の手綱を緩めてはいない。 特に新興企業やテック企業は、従来の伝統やカルチャーを前提としたミドルエンド・ハイエンド車のあり方を否定し、通信・AI・コネクテッド技術による新たな乗車体験で、日系を含むグローバルメーカーと勝負することを図っている。 たしかに、開発期間の短縮によって、品質を落としたメーカーもなくはない。内装や装備は豪華に見えても、見えない部分の部材を安価なものにすり替えたり、開発・製造のプロセスの手を抜いたりする例もある。