母子の関係に思いを馳せる 今秋公開の感動作3選。 “親の心 子知らず? 老いては子に従え?”果たして――。
母を救うために息子が奔走する『西湖畔(せいこはん)に生きる』
\ Story & Introduction / 杭州市、最高峰の中国茶・龍井茶の生産地として有名な西湖のほとりに、母タイホア(ジアン・チンチン)と息子ムーリエン(ウー・レイ)は暮らしています。ムーリエンの父親は10年前に行方をくらまし、タイホアが茶摘みの仕事をして息子を育ててきました。大学卒業の年を迎えたムーリエンは母に楽させたいと願いながらも、なかなか仕事が見つかりません。一方、タイホアも茶畑の主人チェンと懇意になったことで、彼の母親から茶畑を追い出されてしまいます。困ったタイホアは友人の誘いで、ある会社のセミナーに参加し、甘い言葉を信じて洗脳され、違法のマルチビジネスにどんどんのめり込んでいきます。ムーリエンは、なんとか違法ビジネスの地獄から母親を救い出そうと、一線を超える決断をするのですが――。
デビュー作にして『春江水暖~しゅんこうすいだん』(19)で世界中から注目を浴びたグー・シャオガン監督の第二作目。本作でも引き続き、中国の伝統的な風景画「山水画」の世界を映画で表現を試みて、前作の「河」の視点から「山」の視点へと移し、新たな表現や世界観を見せてくれます。
◆母を救い出そうとする息子の奮闘に息詰まる! 朝から晩まで茶畑で茶摘みの仕事をし、自分を育ててくれた母親を喜ばせたいと就職活動するも、まったく仕事が見つからないムーリエン。そんな彼もまた、「ついに仕事が見つかった!」と喜ぶや否や、実は詐欺まがいの仕事でした。ガッカリして意気消沈するムーリエンですが、それでも辞めることが出来てホッと……するも束の間、今度は母親が……! 本作の見どころであり、かつ面白さでもあるのが、母タイホアの変貌ぶりです。それまで化粧っけなしで質素な仕事着に身を包みながらも、その素朴な美しさや魅力はダダ洩れで、だからこそ茶畑の主人に見初められてしまったわけです。ところがマルチ商法ビジネスにハマってからは、派手な化粧で着飾り、妖艶な熟女へ大変身。でも、どこか危うくて怖い……。そう、何かを妄信して突き進む彼女の姿には、破滅の予感が常にまとわりついているような、怖さがあるんです。