メディアは皇族の受験をどのように報じるべきか 成城大教授・森暢平
皇族は学習院に通うべきだと時代錯誤の主張をする人たちがいる。そうした人は、佳子さまの心の叫びに真摯(しんし)に耳を傾け、皇族の学ぶ権利について思いを致すべきではないだろうか。 ◇週刊誌の「フェイク」が秋篠バッシャーを刺激 今回、悠仁さまが筑波大を受験したという情報は、宮内記者会に属する新聞・テレビが合格を報じる直前、週刊誌メディアに漏れた。最初に報じた12月3日発売の『女性自身』(12月17日号)は、「国民反発で東大は断念」と相変わらずのデマを飛ばしている。同誌は、悠仁さまの成績が伸び悩み、それが東大推薦入試の受験断念の要因であることまでほのめかす。しかし、悠仁さまは筑波大附属高校で成績上位である。フェイクニュースは、ネットの世界で秋篠宮家バッシングに情熱を燃やす人たちによって拡散され、嘘が嘘を呼ぶ。 問題は、宮内記者会に属し、深い情報源を持つ記者たちが、週刊誌やネットの嘘情報に何もできなかったことだ。兵庫県知事選の際、ネット上のデマに大手メディアが手をこまねいたのと同じ構図である。悠仁さまには学ぶ自由があり、そのために可能な限りそっとしてあげるのが大人の作法だ。一方で、責任あるメディアが何も報じなければ、フェイクニュースが真実のように受け止められてしまう。 今回、日テレの宮内庁担当、加納の解説は、悠仁さまのプライバシーに踏み込んでいたものの、ネット上の嘘を打ち消すという意味で、重要な情報だった。宮内庁もこうした報道を、当局の許可を得ていないと頭から否定するのではなく、どうすれば皇族の学習環境が整うのか、また、ネット時代の情報発信はどうあるべきかなどをさらに考えてほしい。(以下次号) ■もり・ようへい 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など
「サンデー毎日」2025年1月5日・12日合併号(12月24日発売)には他にも「改革派官僚 古賀茂明の年末激論 原発回帰は亡国への道 倉重篤郎」「インフル、ノロウィルス、腰痛――冬に要注意!な3つの病気」「年末年始に必見 『心が動く!』 配信動画厳選43本」なども掲載しています。