ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000~16万人に、兵士を「使い捨てる」ロシア軍の残酷物語
非ロシア系住民や囚人を激戦地に、プーチンがひそかに進める国内の「民族浄化」。ロシアに連れ去られ成長して、ロシア軍に徴兵されたウクライナ人の少年も...
いま世界で最も陰鬱な場所の1つは、ロシア南部の街ロストフナドヌーだろう。ロシア軍のウクライナ侵攻を後方支援する補給基地があるだけでなく、戦場で犠牲になったロシア兵の遺体が集まる場所でもあるからだ。【アレクセイ・コバリョフ(ジャーナリスト)】 「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「TOS-1」をウクライナ軍が破壊する劇的瞬間をカメラが捉えた 巨大な遺体安置所は数百体を収容できるが、もう何カ月も絶望的なパンク状態にある。ソーシャルメディアに流出した内部映像では、さまざまな腐敗段階にある数百の遺体が廊下に放置されている。 壁沿いには天井まで棺が積み上げられているが、そこに納められた遺体は幸運だ。戦場で回収され、身元が特定され、棺に入れられ、遠く離れた故郷の家族に送り返してもらえるのだから。 ロストフナドヌーに運ばれることもなく、ウクライナの大地で朽ち果てる遺体は無数にある。 確かに彼らは、ロシアによる不当な侵攻の実行部隊であり、ウクライナが自衛権という当然の権利を行使した結果、命を落とした。また、ロシア兵の多くが、民間人を含むウクライナの人々に対して筆舌に尽くし難い狼藉を働いたことも知られている。 ただ、ロシア兵が命を落とすペースが、ウクライナ兵のそれを著しく上回っていることは、ロシア側における2つの大きな問題点を浮き彫りにしている。すなわち兵士の使い方における著しい人命軽視と、その人種的な偏りだ。 まず、ロシア軍内部における人命軽視だが、実際その規模にはギョッとさせられる。この10月には1日の死傷者数が過去最多の推定1500人を記録した(ただし、ロシアもウクライナも正式な犠牲者数は発表していない)。 2022年2月のウクライナ侵攻開始以来のロシア兵の死者は計11万5000~16万人で、1970年代末にソ連がアフガニスタンに侵攻したときの10倍以上だ。平均的な兵士の前線での「寿命」は、1カ月未満ともいわれる。 あまりにハイペースの死者増加に、兵士の補充が追い付かず、新兵はろくな訓練も受けないまま前線に送り込まれ、すぐに命を落とすという悪循環が生まれている。 【ミートグラインダー戦術】 ロシアがハイペースで失っているのは兵士だけではない。武器も、生産量(あるいは武器庫からの補給量)を大きく上回るペースで失っている。 一部の推測では、ロシア軍は10月だけで戦車、歩兵戦闘車、航空機など計500台以上を失った。第1次チェチェン紛争のグロズヌイの戦い(1994~95年)の2倍の量だ。 当時の甚大な損失は、ロシアの軍と社会の雰囲気を著しく悪化させた。現在、ロシア最大の軍備基地の一部は空っぽで、ソ連時代の戦車や装甲車まで前線に引っ張り出されている。 ただ、ロシア兵に関しては、政治家やメディアに登場する識者、そして市民さえも、その命をひどく軽んじていて、それを隠そうともしない。