英紙「日本企業が美術品を所有するのは、創業家が資産を保護するためだ」
川村美術館閉館の余波
DICが川村美術館の閉館を発表して以降、いくつかの変化があった。1つ目は、休館という報道を見聞きした多くの人が、日本が誇るお宝を目にできる日はもうあまり残されていないと大慌てしたことだ。その大半は、同美術館を訪ねてみようと思ったことなど一度もないのに、いまこそ出向かねばと考えた。 【画像】アクティビストの動きの高まりから、上場廃止した日本企業 2つ目は、休館という決断に強く反対する声が上がったことだ。美術館周辺の道路沿いには「休館しないで」と書かれた看板がいくつも設置され、地元・佐倉市役所の公式サイトでは存続を求めるオンライン署名活動が始まった。12月6日までに、5万8131件の署名が集まっている。 3つ目としては、日本を一変させうる事態が起きた。DICのような企業が日本にはほかにどのくらい隠れているのかと、投資家の関心が集中したのだ。社会的に問題をはらむこの手の宝探しをいまや専門とし、本紙がここ数ヵ月ほど話を聞いている複数のヘッジファンドは、DICと状況がよく似た企業が東京証券取引所には多く上場しているとみている。 DICが川村記念美術館の休館を決断するまで、10年以上もの月日を要した。日本は2015年に初めて、上場企業がコーポレート・ガバナンス(企業統治)実現のうえで参照すべき原則・指針を定めた「コーポレートガバナンス・コード(CGC)」と、機関投資家が企業経営者に説明責任を負わせることを義務づける「スチュワードシップ・コード」を導入。するとそれ以降、徐々に変化が見られるようになった。 株主最優先という前提を完全に受け入れていない企業でも、ガバナンスの水準を引き上げ始めたのだ。バリューアクト・キャピタルやエリオット・マネジメントといった有名アクティビストは、日本での機会に大きな関心を寄せるようになった。その一方で、オアシス・マネジメントや3Dインベストメント・パートナーズ、村上世彰が率いる村上ファンドといった小規模ファンドは、続々と強気な動きに出ている。