ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000~16万人に、兵士を「使い捨てる」ロシア軍の残酷物語
ロシア国内の民族浄化
実際、ウクライナ戦争はロシアの人口構成を変えている。莫大な数の戦死者は、ブリヤート人やタタール人、トゥバ人など非ロシア系住民に著しく偏っているのだ。 政府指導部にしてみれば当然の措置とも言える。 ロシア系エリートが多く住むモスクワやサンクトペテルブルクで積極的に徴兵を行い、その多くを使い捨てにしたりすれば、体制を揺るがす政情不安をもたらしかねない。 このため、より貧しく、民族的に非ロシア系住民がより多い地方で大量の若者が戦争に取られている。 また、受刑者も前線の最も血なまぐさいエリアに続々と送られており、ロシアの刑務所は事実上空っぽだとされる。 しかも、ロシアの優生政策はミートグラインダー戦術で完了ではない。この作戦によって失われた人口を、ロシアはウクライナ人によって埋め合わせている。 今回の戦争が始まって以来、大量のウクライナ人がロシア国内に移送されている。その多くは女性と子供だ。また、ウクライナの占領地にはロシア人が続々と入植している。 ロシアに連れ去られた子供のうち数万人は、ウクライナ人としてのアイデンティティーを奪われ、「ロシア化」されている。 第2次大戦中にナチスドイツが、占領したポーランドから金髪の子供たちをドイツに連れ去って養子縁組させ、ドイツ人にした措置をまねたものであることは明らかだ。 既に成長して、ロシア軍に徴兵されたウクライナ人の少年もいる。 数字上はロシアはまだ優位にあり、その自滅的な戦略は今のところ大きな成果をもたらしている。だが、長期的には持続不可能であることは明らかで、ロシア経済への影響も考えればなおさらだ。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がこの賭けに確実に負けるようにするためには、ウクライナが現在以上に、欧米製の兵器でロシア国内の重要目標を攻撃できるようにすることが不可欠だ。 プーチンにとって、膨大な数の非ロシア系兵士を失うこと自体はさほど大きな痛手ではなく、むしろ好都合でもあるのだから。 From Foreign Policy Magazine