「泣いている場合じゃないぞ」全日本駅伝、駒澤大が涙の16位→2位の超人的な大まくり…5連覇失敗は「敗北」か「収穫」か? “箱根ではやり返す”
下級生の台頭とエースの復活
今季の駒澤大は、篠原を除く4年生と中間層の台頭が課題になっていた。3年生は佐藤、山川、伊藤と揃っているのだが、その下の世代がなかなか出てこなかった。その意味では最も懸念されていた2年生から村上と安原が力を見せたことは、箱根駅伝や来年を戦う上で非常にポジティブな要素になった。藤田監督が「収穫」と笑みを見せるのは、ようやく出てきたという安堵感と今後に期待が持てる手応えを感じたからだろう。 「もうひとつ、大きな収穫は、エースの地力を確認することができたこと。駒澤は強いぞということを印象付けられたことです」 藤田監督は、そう語る。 7区、8区では現エースと次代のエースが、圧巻の走りを見せた。7区の篠原はトップの青学大と2分47秒差の5位で襷を受けると、「3番を目指す」と強い気持ちをもって前を追った。先頭で青学大の太田蒼生(4年)と國學院大の平林清澄(4年)が競り合うなか、9キロ地点で創価大を抜いて3位に上がった。 「前がぜんぜん見えなくて、この直線でも見えないのかって思うと厳しいところもありましたが、1秒でも詰めてやろうと思っていました。区間賞を獲れましたが、チームを勝たせるという部分では平林の方が上。今回は負けましたが、個人では(出雲駅伝と)1勝1敗なので、次の箱根で決着をつけたいです」 篠原は太田、平林を上回る49分57秒をマークし、2022年第54回大会でOBの田澤廉が出した49分38秒に迫る、歴代3位の好タイムで区間賞を獲得した。 その勢いを加速させたのが、8区のアンカー山川だった。
「これは、もう行くしかない」
8区のスタート時点でトップの青学大との差は、2分37秒。普通であれば、どう考えても追いつくのは難しいと思うだろう。だが山川だけは、まったく不可能だとは考えていなかった。 「とにかく突っ込んでいきました。5キロで、前を先導する白バイが見えたんです。これは、もう行くしかない。絶対に抜いてやるって思っていました」 青学大のアンカー塩出翔太(3年)は中学時代から知るライバルで、國學院大の上原琉翔(3年)とも同学年。彼らには絶対に負けたくなかった。11.8キロ地点では、トップを走る國學院大との差を1分15秒差、青学大とは1分07秒差にまで縮めた。 トップ争いをする二人が牽制しあって走るなか、山川は自分のペースでジワジワと迫っていったのだ。観戦するファンの声が大きく揺れたのは、伊勢神宮のゴールにつづく直線に入ったところだった。「ここで一気に抜いて、上原まで」と思ったという山川が、青学大・塩出を抜き去って2位に上がり、そのままフィニッシュしたのだ。 藤田監督は、エース二人の復活に笑みを浮かべた。 「篠原は出雲のことがあって、ここでしっかりリベンジしてくれました。山川は練習を見ていても昨年と1段も2段も違う強さを見せていましたし、レース前は最低でも57分30秒でと言っていたのを、それ以上(57分09秒)の走りをして区間賞を獲った。二人で2分30秒以上の差を28秒までつめて、最後に青学大を抜いて2位に押し上げた。これは、非常に大きい。優勝はできなかったですが、最後にひとつでも順位を上げていくという気持ちと走りが大事なんです。それが次に繋がっていくので」 思えば、駅伝シーズンに入る前には、主力の佐藤が不在で、中間層も見えてこない今季の駒澤大は、三大駅伝での優勝争いは難しいのではないかという評判だった。 だが、蓋を開けてみると、出雲では優勝を争っての2位、全日本は16位から2位にまで巻き返した。これは、チームに底力がないとできないことだ。
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