「着物の再生から広がる岩手のものづくり」 久慈のいずみが切り拓く持続可能なアパレル事業
久慈市や二戸市を含む岩手県北地域は、世界でも有数の縫製技術を誇るアパレル企業が数多く立地している。これらの企業は、コートなどの重衣料からシャツやワンピースなどの軽衣料、子ども服から高級婦人服まで、多種多様な製品を製造しており、地域経済を支える基幹産業となっている。 岩手県久慈市にある有限会社いずみは、ヴィンテージ(古着)の着物を洋服に再生する事業を開始。もともと子ども服を中心に製造していた同社が着物のリメイクに着目したきっかけを、代表取締役の寿松木さんにインタビューした。
デザイン・品質の両方を高いレベルで実現
高級ベビー服や子ども服を中心に製造している同社は、先代から「世界の宝」である子どもに関する仕事にこだわり、技術力を高めてきた。その結果、世界的に有名なブランドからも発注を受けるまでに成長した。この成功要因は何だったのだろうか。 「子ども服の製造はコストがかかるうえにデザインが多岐にわたるので、全国的にみると敬遠する企業が多いのが現状ですが、当社は子どもを持つ女性スタッフが多いためか、デリケートな子ども服を可愛く作ることは逆に得意としています。 また、子ども服は、柔らかい素材と硬い素材を組み合わせる必要があるなど、生産している現場が好まないケースも多いのですが、当社では、サンプル製作を行った後で、デザイナーへの逆提案や、より可愛くなるアイディアを出すなど、アパレルメーカーからの要求以上のことに取り組んできたからこそ、評価を頂いていると思います」
そんななか、同社は2023年11月にヴィンテージの着物を洋服に再生する事業を立ち上げた。そのきっかけは海外での経験にあったと寿松木さんは話す。 「私は以前、中国に6年ほど駐在していました。当時から親交のあった、日本文化が好きな中国人の友人から、着物に関しての問い合わせを多数受けたことで、日本文化を世界的に発信できるアパレルである『着物』について考える機会が多くなったことがきっかけとしてありました」 そこで生まれたのが自社ブランド「wappi(ワッピ)」だ。同社は元お笑い芸人コンビのザブングルのひとりで、現在はOMATSURIの社長である松尾陽介さんの協力を受け、誕生した。