「着物の再生から広がる岩手のものづくり」 久慈のいずみが切り拓く持続可能なアパレル事業
以前は「ハレの日」に着用する機会があり、どの家庭にもあった着物。現代では着る機会が減少し、多くの着物が箪笥で眠っている状況だろう。 「現在も、個人の方、または着物関係者(問屋等)から『自分(自社)が持っている着物を活用できないか』とのお声を複数頂いており、活用されていない着物は一定数あるものと予想しています。また、着用されてきたヴィンテージの着物については、その持ち主の方・ご家族等の思い出も伴ったものであり、それも魅力のひとつとなっているかと思います」
高い縫製技術と着物の融合
改めて着物への思いや、日本の伝統文化の継承について聞いてみた。 「昨今、着物を着る機会が非常に少なくなっており、母親、祖母等から受け継いだ着物を着る機会が少ないといった声をよく伺います。 そのようななかで、眠っていた着物を、現代でも着やすいデザイン・製品に生まれ変わらせることは、単なるアップサイクルやSDGsという面だけでなく、着ていた方、ご家族の思い出などを、新しい形でこれからに(未来に)繋げていくことにもなると考えています。 また、国内だけでなく、海外の方に対しても、着物という日本文化をより親しみやすい形でご提案することは、日本を知っていただくだけでなく、製品を通して、当社および北いわてのアパレル企業の縫製技術の高さを知っていただくことにも繋がると考えています」 「今回、補助金を活用し、自社ブランドの拠点として、久慈市内の当社所有の蔵を『工房兼ギャラリー』として整備したところであり、今後そこで製品の対面販売や、試作品展示等を行っていきたいと考えています。国内外のお客様に、自分の目で見て触れていただきながら、『メイドイン・北いわて』を感じて頂ければ嬉しいです。」 「また、製作にあたっては、地元の障害者福祉施設『松柏園』様にお願いをし、着物のクリーニングをしていただいています。着物地のクリーニングは特殊な技術が必要で、なおかつ通常の生地と組合せてクリーニングできることが必要になります。このような地元事業者との連携を通じて、地域への波及効果という面でも期待をしています。」 着なくなった着物のリメイクから生まれた自社ブランド・wappiは、北いわての優れた縫製技術と日本文化を融合させ、これからも世界に向けて発信していく計画だ。 「着物をはじめとした、使用されなくなったこと(事)・もの(物)に、新しい役割を担わせていく、失ってはいけない日本のいろいろな伝統を、さまざまな形で世界に発信していきたいと考えています。 また、製品製作にあたっては、北いわて、ひいては日本の「ものづくり」に対する真面目さと、使う(着る)人のことを思いやる気遣いが表れるような、そんな製品を作っていきたいと考えています」