「着物の再生から広がる岩手のものづくり」 久慈のいずみが切り拓く持続可能なアパレル事業
寿松木さんは従来、松尾氏と親交があったといい、同氏が考案する独創的なデザインを、どのように製品化していくか、服に仕立て上げていくか、非常に面白い取り組みだと考え、企画をスタートさせたという。 「正直なところ、松尾氏のアイディア、デザインにお任せしているところで、毎回どのようなデザインが上がってくるのか、当社としても楽しみながらご一緒している状況です。“こだわりがないのがこだわり”といった感じですね(笑)」 wappiでは着物をスカジャンにリメイクした商品もある。この斬新なアイディアも松尾氏とのやりとりの中で生まれたものだという。 「着物の柄を生かせる、なおかつ今着ても違和感がないデザイン・商品ということで、スカジャンやワンピースがアイディアとして挙がってきました。そこから、松尾氏による商品スケッチ案を、当社契約デザイナーと共に商品に落とし込み、具現化したものになります。 着物リメイクにおいては、着物を一度ほどき、再度仕立て直すことになりますが、その着物が持つ柄を合わせることが非常に難しく、高度な技術が必要となります。 また、素晴らしいデザインや企画でも、高い縫製技術がなければ、お客様のことを考えた、高い品質(着心地、シルエット等)を実現することは不可能です。当社では、プロのパタンナーに依頼し、より着やすい形に仕上げています。日常的な着やすさ、着心地等を確保し、デザイン・品質の両方を高いレベルで実現できるのがwappiの強みだと考えています」
もともと同社は、各アパレルブランドのOEMでの製造が大半を占めており、メーカーの販売計画や商品ラインナップ、マーケットへの供給量等により同社への発注量が決まる業態となっている。 しかしコロナ禍において、百貨店等が休業、取引先メーカーにおいても生産計画の見直しが行われ、同社への発注量が減少した。 このような状況は経営上大きなリスクがあると判断し、従来の経営とは異なった事業で一定の売り上げを確保しようとの考えで、国(中小企業庁)の事業再構築補助金に応募、採択となった。これにより、同社の高い縫製技術を活用し、新商品の企画開発から加工、販売までを一貫して行う、自社ブランドが立ち上がった。 「また、前述のとおり、着物に対し、海外(中国)からの問い合わせを頂くなかで、着物の持つ日本の伝統文化や、製造における全ての作業(工程)において、熟練の職人が気持ちを込めて製作したものといった背景を、世界中の方に、わかりやすく、親しみやすい形で発信し、ファンになっていただきたいと考えました」