土星初のトロヤ群小惑星「2019 UO14」を発見 水星以外の全ての惑星でトロヤ群小惑星を発見
「2019 UO14」が土星初のトロヤ群小惑星であることが判明
許氏らの研究チームは、2019年に発見された小惑星「2019 UO14」に注目しました。2019 UO14はハワイの掃天観測プロジェクト「パンスターズ(Pan-STARRS)」によって発見されましたが、当時のデータでは土星のトロヤ群小惑星であるかどうかを判定するほど精度が高くありませんでした。これは、2019 UO14の見た目の動きがあまりにも遅く、正確な公転軌道を決定することが困難であったためです。そこで、別の天文台のアーカイブデータや、ハワイ大学の2.2m望遠鏡で新たに観測を行うことで、最終的に2015年から2024年までの240回の観測データを取得することができました。 この観測データを元に力学的なシミュレーションを行った結果、2019 UO14は土星のL4、つまり土星に先行して公転する軌道に留まっている可能性が高いことが明らかにされました。2019 UO14は元々は「ケンタウルス族」と呼ばれる、木星から海王星までの間に公転軌道を持つ小惑星であったと考えられます。しかしケンタウルス族の公転軌道は不安定であることが知られており、しばしば変化します。2019 UO14は、ケンタウルス族の公転軌道から変化した先が、たまたま土星のL4トロヤ群小惑星であったと考えられます。 2019 UO14は、初めて発見された土星のトロヤ群小惑星です。しかし、トロヤ群小惑星である期間は余りに短いと考えられています。シミュレーションによれば、2019 UO14はたったの約2000年前に土星のトロヤ群小惑星になったと考えられ、約1000年後には再びケンタウルス族に戻ってしまうと推定されます。土星と同じく不安定なトロヤ群小惑星しか持たないと考えられている天王星でさえ、その安定性は約100万年程度であることを考えれば、2019 UO14の約3000年という期間は極めて短命です。この短命さ=数の少なさが、土星のトロヤ群小惑星の少なさと発見の遅れに繋がったとも考えられます。 今回の土星のトロヤ群小惑星の発見により、太陽系の惑星の中でトロヤ群小惑星を持たない惑星は水星が唯一となりました。ただし、水星は惑星の中で最も重力が弱い天体な上に、公転軌道の形(軌道離心率)が大きく変化することで知られており、力学的不安定性から、水星のトロヤ群小惑星はおそらく存在しないと予測されています。今回の2019 UO14の研究により、トロヤ群小惑星の存在が予測されている全ての惑星で、1個以上のトロヤ群小惑星の存在が主張されたことになります。