「ポスト山本由伸」は誰だ? プロ野球2024「沢村賞」展望
「長いイニングを投げられる先発完投型の投手。189㎝の長身から投げ下ろす伸びのあるストレートとフォークが投球の中心で、今季はスライダーやカッターの感覚をつかみ、落ち球とストレートの間の中間球が組み込まれたことで、より完成度が増しました」 しかし、7月以降は勝ち星がなかなか積み上がらない。 「今季は中6日登板を続けていますが、これは2020年のトミー・ジョン手術以降で初めて。さらに、春先から毎試合のように110球以上を投げてきた疲れもあり、3度目の完封を飾った6月上旬をピークに球の強度や勢いは落ちてきました。ここから踏ん張れるか、真価が問われます」 12球団で最も早く10勝に到達し、最多勝争いをリードする有原航平(ソフトバンク)はどんな状態か? 「馬力があり、全球種を器用に投げ分けられます。今季は昨季以上に各球種が最適化され、毎試合110球前後、7回近くを安定して抑えています。ソフトバンクの守備と打撃の後押しもあり、最多勝候補なのは間違いないです」 防御率1点台投手がずらりと並ぶセ・リーグには注目投手がまだまだいる。 「東克樹(DeNA)はダルビッシュ有を超える『29試合連続クオリティスタート(6回以上3自責点以下)』を継続中。すべての球種が自在で牽制などもうまく、最多勝と最高勝率に輝いた昨季同様の安定感です」 安定感という点では森下暢仁(まさと)と大瀬良大地(共に広島)も負けてはいない。 「大瀬良は菅野同様、ストレートの強度が戻って復活。多彩な変化球を意識させ、強度が戻ったストレートをズドンと突き刺す投球ができています。 森下はオーバースローから伸びのある回転のストレート、チェンジアップ、カーブに加え、最近はカッターの調子が良く、王道型の投球スタイルです。床田も含め、広島の投手はカッターの強度が高まってきており、結果に反映されているといえます」
■沢村賞争いをする投手たちの共通項 このほか、お股ニキ氏が「新人離れした投球」と認める武内夏暉(西武)や「今、日本で一番いいフォークを投げる」というカーター・スチュワート・ジュニア(ソフトバンク)ら、来季以降の飛躍が楽しみな投手はまだまだいる。 ただ、今季の沢村賞は前述した9投手に絞られる。彼らの共通項は、今季の"飛ばないボール"に適した球種を得意としていることだという。 「今季のボールは重くて沈むといわれるため、髙橋や才木のスプリット、モイネロのスライダーとチェンジアップ、菅野のフォークとカットとスライダーとカーブ、有原のフォークとチェンジアップにカッター、床田のカッターとツーシーム、大瀬良のカッターなどがとにかく効果的。球の強度と制球がいい投手ほど圧倒的な成績を残せます」 ここから残り2ヵ月弱、沢村賞争いで注目すべき点は? 「今回挙げた評価はあくまで現時点のもの。打球が飛びやすく、投手不利とされる夏の暑い時期にどれだけ成績を残せるか。調子を崩さなければ、どの投手もあと6~8試合ほど登板しますが、例えば菅野が18勝すれば可能性は十分ありますし、まだまだわかりません。ハイレベルな沢村賞争いに期待したいです」 *成績は8月14日時点 文/オグマナオト 写真/時事通信社