考察『光る君へ』5話 六条の荒れ果てた屋敷での辛い告白…道長「俺は、まひろを信じる」吉高、柄本の繊細な芝居に泣く
いよっ!実資!
花山天皇(本郷奏多)のやる気は認めつつも、関白とは違い、そのまま放置する気は全くない実資(秋山竜次)。 「夢を掲げるだけであれば誰にでもできる。実が伴わねば世は乱れる」 「政は子どもの玩具ではない」 いよっ!実資!さすが賢人、頼りになるぅ!と拍手喝采だ。配役・衣装を着けたビジュアル発表時に、秋山竜次のハマりぶりに驚き、キャストの中でも平安時代の装束の似合いぶり一位ではなかろうかと思ったが。こうして演じ、動き出してもまさに藤原実資。しかし、相手が帝であろうとも、このままでは駄目だと筋を通そうとする男、帝の寵臣相手でも一歩も退かぬ男が、第3話では内侍所の女房たちには一方的にやられて凹まされてしまったことを思うと、ちょっと笑える……というか、内裏の女房ってどれだけ恐ろしいのだ。
衛生環境を考慮したい
弘徽殿の女御・忯子(井上咲楽)が花山帝に「愛でられすぎて倒れる」。お気の毒~お幸せ~と冷やかす女房たちのひそひそ話だが、ふと思うのは当時の衛生環境である。 平安時代の貴族の入浴は、蒸し風呂と足湯くらいのサイズの小さな湯殿を使った行水で、頻度はこれらを併せて月に五、六回ほど。それも占いで決められた日のみだった。入浴は清潔を保つためというより穢れを払う「禊」の意味合いが強かったという。 第2話で円融帝(坂東巳之助)を久しぶりにお迎えする前の詮子(吉田羊)が湯あみしたことについてこれまた女房たちが「やる気満々!」と、はしたない悪口を言っているが、現代のように房事の前後にたっぷりの湯でシャワーを浴び、石鹸で体を洗うなどできなかった時代。のべつまくなしのお渡りでは、性病まではいかずとも細菌感染、それによる発熱などの不調は避けられなかったのではないか。抗生物質はもちろんない。女房たちは嗤うけれど、ただただ、忯子が気の毒である。 その後、忯子懐妊の噂が兼家の耳に入っており、伏せっていたのは妊娠初期特有の不調かもと思わせる描写となっているが、いずれにせよ生殖……妊娠出産に関わることが女性の体に負担なのは今も昔も変わりない。衛生環境も医療も整っていなかった時代は、より深刻だったろう。