県外出身選手集め批判の葛藤を乗り越えて青森山田が2年ぶり高校サッカーV
キャプテン交代が命じられたのは2種年代の最高峰、プレミアリーグイーストで清水エスパルスユースに初黒星を喫し、優勝が絶望となった直後だった。2回戦で敗退したインターハイ。決勝で大苦戦を強いられた全国選手権の青森県予選。悪い流れを断ち切るために、ショック療法が必要だと判断された。 果たして、黒田監督をして「賭け」とも言わしめた荒療治は吉と出た。重圧から解放された檀崎は、準決勝と決勝で計3ゴールと暴れ回って殊勲のヒーローになった。その勇姿を予感していたからか。檀崎が使っていた赤いキャプテンマークを、飯田はそっと取り寄せてベンチへ忍ばせていた。 そして、表彰式を終えて場内一周に入り、バックスタンドに差しかかったところで「ありがとう」という言葉を添えて、檀崎の左腕に巻いた。 「自分がキャプテンを務めたのはほんのちょっと。それまでチームを支えてきたのは檀崎ですから」 県外も県内も、青森山田中学から入ってきた選手も、高校から門を叩いた選手も関係ない。日本有数の豪雪地帯で図らずも出会い、喜怒哀楽を刻みながら青春の3年間を共有したからこそ芽生えた究極のチームワークが、2年ぶり2度目の全国制覇を縁の下で支えていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)