あの「セロテープ」が価格競争から脱却できたワケ 「座って商談をする時間ももらえなかった」
他社セロハンテープの中には、本体のセロハンは植物由来であっても、粘着剤にはアクリル樹脂やシリコーンなど石油系素材を原材料としている製品もあります。対して『セロテープ』は、発売当初から一貫して「天然素材が主原料」で、生物由来の商品につけられる「バイオマスマーク」も取得しています。 ニチバンでは、この環境にやさしい天然素材であることを何よりの「付加価値」として、パッケージや巻き芯に「天然素材」と大きく表示。広告や営業でも天然素材が主原料であること、また商品メリットなどもアピールしてきました。
例えば、天然素材が主原料の『セロテープ』は、石油系素材を使ったものと比べて、廃棄して燃やした際に二酸化炭素の排出を抑えられます。つまり、日本が2050年に達成をめざす「カーボン・ニュートラル」を具現する商品なのです。 また、植物繊維であるセロハンの特性として、力をかけずにサッと引き出せ、指だけでスッと切れるという使いやすさがあります。静電気が起こりにくいのできれいに貼りつけることができ、薬局など粉末を取り扱う場所でも安心して使えるといった利点もあります。さらに天然ゴムを原材料とした粘着剤は、どんな素材にも比較的貼りつきやすく、においも少ないため、汎用性・利便性の高さも特徴のひとつです。
『セロテープ』はこのように、「植物由来」だからこそのメリットや性能面での利点も満載で、高い付加価値があり、国産セロハンテープの先駆けとしての歴史とブランド力を土台に、市場での地位のゆるぎなさは約束されているかのように見えました。 ■OPPテープにシェアを奪われた ところが、話はそう単純ではありません。近年、透明テープとして、素材が植物由来のセロハンではなく、ポリプロピレンフィルムという石油系のプラスチック素材を使用したOPP(Oriented Polypropylene)テープが多く出回るようになりました。