陸空両用の「空飛ぶ車」 社会を変える「ASKA」の挑戦 実用化を見据えた日本での活用方法とは?
サンフランシスコの「ゴールデン・ゲート・ブリッジ」から車で南へ約1時間。米グーグル本社があるカリフォルニア州マウンテンビュー市に目指す企業はあった。 【写真】垂直離着陸でき、翼を格納すれば、SUVサイズで公道を走れる世界初の空飛ぶ車 エアモビリティ会社「ASKA」。空飛ぶ車の実現を目指し、日夜開発を続けているスタートアップだ。 同社の会長兼最高執行責任者(COO)は、日本人女性のカプリンスキー真紀氏で、夫のガイ氏とともに2018年に創業した。 小誌が真紀氏を初めて取材したのは2022年4月。当時はコロナ禍の真っただ中であり、渡米のハードルは高く、オンラインでの取材になったが、今回、対面での取材が実現した。 私事になるが、真紀氏と私は同世代であり、空飛ぶ車の実現にかける思いや志を直接聞きたいと、この間、ずっと思っていた。しかも、取材当日は、フルスケール実機の「ASKA A5」も見ることができるという。期待に胸を膨らませながら現地へ向かった。 真紀氏は1977年生まれ。幼い頃、29歳の父を病気で亡くした後、妹も交通事故で他界し、母親に育てられた。 志半ばで亡くなった父と妹の姿を見て「私は精一杯生きよう」と決意し、高校卒業後、海外で学び、イスラエルで日商岩井(当時)に現地採用された。ここでガイ氏と出会い、結婚。夫婦で共同創業者としてこれまでにスタートアップを3社立ち上げ、技術開発、M&Aに成功。前社IQPは2011年に東京で起業し、17年に米GE Digital社へ売却。ASKAは3社目の挑戦となる。そして、プライベートでは3児の母でもある。 なぜASKAを創業したのか。真紀氏はその経緯をこう語る。 「アメリカでも日本でもそうですが、都市の人口集中は行き過ぎています。特に私たちのいるシリコンバレー一帯は、住宅価格が異常に高く、庶民には手が届きません。仮に購入できたとしても、部屋は狭く、子育てにも不向きです。郊外に足を延ばせばゆったりとした暮らしができますが、その代わり、通勤時間帯は大渋滞を覚悟する必要があります。都市の人口集中を改め、お金と活力を郊外や地方にも分散させ、人々の生活の質を高めたい。そのためには、陸空両用の空飛ぶ車が必要で技術的にもタイミング的にも実現するのは今だと確信したのです」