「トランプ関税は大したことがないので怖がらなくてもいい」は本当なのか
一方、アメリカの労働力の4%超が不法移民が占めているとの調査もある中で、農業部門をはじめ、不法移民の労働力によって成り立っているビジネスがあることも、忘れるべきではない。 仮に不法移民を一人残らず送還したとすれば、労働力が大幅に減少、雇用コストが跳ね上がるという懸念もある。コストの問題だけで済めばまだよいが、そもそもそのビジネスが成り立たなくなる恐れのほうが、はるかに高いと思われる。さらに問題をややこしくさせているのは、そうした問題を抱える農村部の多くは、共和党の強固な支持基盤だということだ。不法移民の強制送還に関する予算案には、農村部の共和党議員が反対に回ることも十分にありうる。
■トランプ次期大統領が意地を張るリスクに注意 次に、輸入品に対する追加関税の賦課も、最終的にはかなり骨抜きの政策となる可能性が高そうだ。確かに、トランプ次期大統領は公約として、中国からの輸入品には最大で60%、その他の国からのものも10%から20%の関税をかけると公言していた。また、昨年の11月25日には違法薬物流入に対する制裁措置として、中国からの輸入品に10%の追加関税を賦課すると、自身の運営するソーシャルメディアに投稿。さらに、移民や違法薬物の流入を理由に、カナダやメキシコからの輸入品には25%の追加関税をかける意向を示し、市場を驚かせた。
もっとも、こうした追加関税は、輸入品の価格を押し上げることで新たなインフレにつながる可能性もあるし、相手国が報復関税などの対抗措置を打ち出すことになれば、経済成長の足枷となるのは避けられない。 トランプ次期大統領はこうした関税を、相手国との交渉のカードの1つとして利用する可能性が高い。実際、1期目でも、少しでも有利な条件を引き出すために、当初は無理難題を吹っ掛けることが多かった。実際、関税が現実のものとなれば、大統領がいちばん嫌う株価の下落につながる恐れもあり、最終的にはアメリカ側も、かなりの歩み寄りも見せることになると、考えておいてよいはずだ。