知られざる貧困家庭の“103万円の壁” NPO法人が「子どもの受験費用支援」や「所得要件の見直し」を国・自治体に要望
子どもの受験費用を捻出するために借金する保護者も
第二の要望は「貧困の連鎖を断ち切るために困窮家庭の子どもへの大学等受験への公的な支援を!特定扶養控除の年収要件引き上げや、高等教育の修学支援制度の要件緩和も」。 アンケート結果によると、半数以上の保護者が大学などの受験費用(塾・予備校などの費用も含む)の見積もりを「100万円以上」と回答。一方で、世帯所得が200万円を下回る回答者も半数以上だった。約6割の回答者は、受験費用を準備するために、家族や知人、または銀行やクレジットカード、消費者金融から借り入れを行うことを検討している。 さらに、75%の保護者が「受験や進路に関して子どもが家計の状況を気にしていることが精神的に負担である」と回答した。困窮が原因で子どもを塾や予備校に通わせられない家庭、受験料を抑えるために受験校数を絞る家庭、進学先が自宅から通える範囲の学校や国公立の学校に限定される家庭、受験や進学のために子どもがアルバイトをする家庭、子どもが進学をあきらめて就職を選ぶ家庭も多々あった。 渡辺氏は、高等教育に関しては授業料・入学金の免除または減額や給付型奨学金といった「進学後の支援制度」に比べて、受験段階での支援が不足していると指摘。 家庭の経済状況に関係なくすべての子どもが安心して大学受験などに挑戦できるようにするため、受験への公的支援を拡大することを、国や自治体に要望した。
コロナ禍「特例貸付」の返済は、現在でも大きな負担に
第三の要望は「コロナ禍における特例貸付(緊急小口資金等)全ての子育て家庭の返済免除の実現」。 アンケート回答者の約2割は、2020年以降のコロナ禍の際に「緊急小口資金」や「総合支援資金」などの公的な貸し付け制度を利用した。 利用者のうち、約4割は80万円以上を借り入れた。また、8割以上は「住民税が非課税であること」などの要件により返済免除となっている一方、免除とならなかった家庭では返済が家計の大きな負担になっている。 渡辺氏は、特例貸付を利用した子育て世帯はそもそも貯蓄などがなく、日々の生活費にも困っていると指摘して、子育て家庭は全件返済免除とするように要望した。