離婚調停には「ボロボロ」車と安物時計で登場…離婚カウンセラーが経験した元”夫”のずる賢い手口
コロナ禍以降、生活スタイルの変化に伴って夫婦の時間が増えた結果、熟年離婚が相次いでいる。離婚の原因を紐解いてみると、夫婦関係のほんのささいな不満に根ざしていることも少なくない。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 本連載では、離婚カウンセラーとしてこれまで約4万件もの離婚相談を受けてきた著者の新刊『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』(岡野あつこ著)より一部抜粋・再編集して、夫婦関係におけるトラブル回避のためのノウハウをお届けする。 身近な人間関係に対するコミュニケーション技術は夫婦間の問題のみならず、職場や家庭、子どもや介護にまつわる悩みの解決にも役立つはずだ。 『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』 連載第37回 『離婚するべきかどうかがハッキリと分かる、離婚カウンセラー本人が実際に離婚時に試した《究極のシミュレーション》』より続く
離婚調停に貧乏のフリをしてきた
調停で決まった、経済的な条件は私にとってかなり不利なものでした。慰謝料はゼロ、養育費は子どもが18歳になるまで。財産分与もゼロという内容でしたので。 その当時の私は法律のことにはまったくの無知だったので、自分が損になる証拠どりだったことにすら気づいていませんでした。もっとお金をもらえたはずとわかったのは弁護士に依頼したあとのことです。 その経験から、離婚で理不尽な思いをする人をつくらないために、世の中にはそれまでまだなかった離婚カウンセラーという職業を始めようと決めたのです。 いま思うと、元夫の対応にはちょっとズルいところもありました。普段はベンツに乗ってロレックスをしているくせに、離婚調停にはわざとボロボロの車で来て、時計も安物に替えていました。そうやって貧乏だから払えないという調停委員の心証にもっていったのです。
夫の財布から10万円を抜き取っていた
彼は不動産業でしたが、宅建(宅地建物取引士)の資格を持っていなかったので、私が代わりに取ってあげたのです。彼の事業が順調だったのはそのおかげでした。 時代はバブルの終わり。家を1軒売ると報奨金だけで100万円も稼げたので、彼の財布にはいつもお札がいっぱい入っていました。 でも、彼は家にそのお金を入れてくれません。ある程度の額を決めて家計に入れてはくれましたが、家のローンと生活費でぜいたくはできません。自分ばかり遊んで散財する夫に腹が立ったので同居の母を見張りに立てて、夜中、夫が寝入っているスキに彼の財布から10万円ぐらいずつ抜いていました。というのも、彼の財布には毎晩の日付の入った高級な食事、スナック、クラブの領収書がザクッと入っていて、10万円くらい抜いてもまったく気づかないのです。このお金を夫が稼げているのも私の内助の功のおかげだと、自分の行為に大義名分を立てたのです。 よいことではありませんが、正面から要求したところでケンカになるだけですし、背に腹は代えられなかったのです。 実は夫婦の場合、パートナーのお金を抜いても罪にならないのです。正確に言うと窃盗罪ではあるのですが、犯人が配偶者、直系血族または同居の親族の場合は刑が免除される規定があるからです(刑法244条1項の「親族間の犯罪に関する特例」)。とはいえ当時はこんな知識もなく、ただただ稼ぎをシラッと隠している夫に腹が立っての仕返しでした。 『「愛しているフリ期間」を設けることが関係改善への「第一歩」…夫婦仲を取り持つために演じるべき「良いパートナー」像とは』へ続く
岡野 あつこ(夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー)