リペア・リセールで循環する、京都「ミッタン」の「過去を肯定し続ける」服作り
営業日は木曜から土曜の週3日。客の半数以上は府外からの顧客だという。店頭に立つのは製品に詳しい営業スタッフや三谷武デザイナー自身だ。ラックに並ぶ再販品や新製品、サンプル品の説明のほか、質問すると、製品のストーリーやブランドコンセプトを直接デザイナーから聞くことができる。
店を持った理由は「再販品を売る場が必要だったことに加え、直接ブランドストーリーを伝えたかったから」。購入率が高く、中でも再販品がよく動く。クリーニングのみの再販品の価格は上代の4~5割程度。「新品は安い価格帯ではないので、試してみたいという方が再販品を手に取ることが多い。ブランドの考えを理解してくださっている方も増えている」。修繕は500円から、染め直しは2000円からと安心の価格設定だが、これでは利益は出しづらい。「確かに利益は出ない。売価に吸収させるのではなく、販管費として考えている。広告費はほとんどないが、修繕・染め直しの活動自体がブランディングに寄与していると考えている」と三谷。
店頭で直接接客するようになり、顧客と一緒に“永く続く服”を作っている感覚が強まったという。「修繕や染め直しの依頼時や買い取りしたときに私たちに託してもらっていると感じる」。QRコードを付けて製品情報を提供するのは「誰がどのように作ったかを知ると簡単に捨てられなくなるから」。第三者認証でトレーサビリティを担保するというよりは、製品のストーリーを伝えるためだ。
“作ったものを肯定し続ける”ために新製品はスタッフ全員で検討
製品ラインアップは定番品が約7割、新作が約3割。ハンカチなどの小物を含めて適正数だと考える70~80型程度をそろえる。製品デザイン時に考慮するのは「長く着ていただけること。シーズンごとに新作を発表する場合、1シーズンだけ肯定できるものを作ればいいが、『ミッタン』では数シーズンにわたり販売するものもあるし、再販品と新品が同じラックに並ぶ。過去に作ったものを肯定し続ける必要がある」と語る。デザインは「世界に遺る衣服や生地にまつわる歴史を元に現代の民族服を提案する」ことを念頭に、時代の流れにとらわれることのないよう心掛けている。民族服の平面的な構造を再解釈したデザインが多く生地の無駄が少ないものもあるが、通常パターンの製品もある。「生地のロスはおおむね30~5%。全ての生地ではないが、残布を使った製品も提案している」。新製品は全社員で検討し、修理のしやすさに加え、加工や染色、縫製に関しても強度を検討する。