人形遣いが楽しく語る文楽の魅力と思い 文楽劇場へ潜入
人形遣いが楽しく語る文楽の魅力と思い 文楽劇場へ潜入 THEPAGE大阪 主題歌「たとえば」打越元久
気軽に観に来ていただけたらうれしいです──。大阪市中央区にある「国立文楽劇場」。同市の繁華街なんばや、日本橋駅近くに位置し、日本の伝統芸能である人形浄瑠璃・文楽を観ることができる劇場だ。だが、正直なところ劇場を知っていても中に入ったことがないという方も多いのでは? 大阪が発祥である歴史ある文楽の公演を行う劇場へ潜入し、人形遣いの吉田幸助さんにその魅力を聞いてみた。
日本を代表する伝統芸能の一つ
文楽は日本を代表する伝統芸能の一つで、大夫、三味線、人形遣いの「三業(さんぎょう)」で成り立つ三位一体の演芸だ。 その歴史を振り返ると、江戸時代に竹本義太夫が大阪道頓堀に竹本座を創設し、名作者・近松門左衛門の作品を演じ始めた。 人形浄瑠璃が「文楽」と呼ばれるようになったのは、淡路島出身の興行師、初世植村文楽軒が芝居小屋を大阪に建てたことがきっかけ。そういうことから、文楽は大阪が発祥の地というわけだ。 そんな縁のある大阪の地に建つ、現在の同劇場が建ったのは1984年。だが、外観も中も古さを感じることはなく、むしろ上品な空間で居心地がよい。 ガラス張りの大きなケースには鮮やかな色の着物に身をまとった文楽人形も飾られており、売店では文楽にまつわるおしゃれな土産物も多く売られており、長年同市民である筆者も知らない、ならではの土産の数々も並べられていた。
幸助さん「表現できることに魅力」
同劇場職員に案内されたのは、楽屋入り口。周囲には着物に身をまとった演者の人が多い。そこで紹介されたのは、文楽人形遣いの吉田幸助さん(49)。26日まで行われている同劇場公演「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」で主役の「和藤内」を遣う。 そして今回、その主役をはる人形、和藤内を間近で見せてもらう。会ってから優しい笑顔が印象的な幸助さんだが、いざ人形を手にすると目の色が変わり、鮮やかな手さばきで、まるで普通に生きているように和藤内を動かす。 聞けば中学卒業と同時に、父親の吉田玉幸さんに弟子入り。当初は弟子入りを反対されたが、それを押し切ってまで入門した。「片腕1本で表現できることに魅力を感じた」と語る幸助さん。 「修業は厳しかったですよ。昔のことですから、でけへんかったらどつかれるし。舞台観てなかったら『なにしてんねん』と怒られたり」。だが、どんなに厳しい修業でもめげなかった。 足遣い10年、左遣い10年と言われる厳しい修業を乗り越え、現在は「国性爺合戦」の和藤内を遣うまでに。そして、筆者の目の前で吉田玉翔さん、桐竹勘介さんと和藤内を舞台と同じように演じてくれた。じっとしていた人形が、この3人が手にしただけで、人間と変わらないような動きをみせる。ここまでの技の裏側には、相当な努力を積み重ねてきたことだろう。