東証の取引延長、恩恵は短期アルゴ勢に集中か-機械的な株価変動警戒
(ブルームバーグ): 東京証券取引所の取引時間が5日から延長されるのに伴い、決算などの株価変動材料を市場が開いている時間帯に発表する企業が増える見通しだ。投資家の売買機会を確保し、市場の利便性を高めることが時間延長の狙いだが、恩恵を受けるのはアルゴリズムを用いた短期投資家に偏るとの見方が出ている。
現物市場の取引終了時刻は現在よりも30分遅い午後3時半になる。東証の10月18日時点のまとめによると、2025年3月期第1四半期の決算を午後3時~3時半に発表した企業(1103社)のうち、5日以降に第2四半期決算を開示するのは約800社。その約半数が取引時間中の公表を予定している。第1四半期決算は全体の8割以上が取引終了後の発表だった。
日本取引所グループ(JPX)は延長により、市場参加者の利便性や東京市場の国際競争力、レジリエンス(耐久力)の向上を目指す考え。だが、企業業績に着目して投資するヘッジファンドやロング(買い)オンリーの投資家からは、時間延長がむしろ、企業価値を必ずしも反映しない機械的な株価変動を引き起こすのではないかと懸念する声が上がっている。
スイスのプライベートバンク、ユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)でファンドマネジャーを務めるズヘール・カーン氏は、「デイトレーダーや高速取引業者(HFT)にとっては良いかもしれないが、長期投資家としては取引時間の変更は有益だとは思わない」と話す。長期投資家は取引終了後に決算資料を確認し、会社の説明も聞いた上で投資判断するのが好ましいとの見方からだ。
JPXの山道裕己最高経営責任者(CEO)は10月29日の定例記者会見で、取引中の決算発表が増えると、アルゴリズムが反応して株価のボラティリティーが上がる可能性はあるとした上で、流動性が高い日本市場は「誤反応があれば最も早く修正できる」と説明。価格発見機能が働いている市場では、決算などの材料を「取引中に株価に織り込ませる方が恐らく正しい判断ではないか」と述べた。