「世界の労働者の叫び」メーデーの意味を問い直す
世界を見渡すと、メーデーの日である5月1日が祝日である国が多いことに気づく。当然ながら社会主義国では祝日であったが、資本主義国であるフランスやドイツなどのヨーロッパの国でも、多くは祝日である。 ■メーデーは祝日とすべきか 日本ではゴールデンウィーク(黄金週間)の狭間の中にあるにもかかわらず、普通の日になっている。確かに連休である以上、家族旅行に出かけたりすれば、この日だけデモ行進に参加することは難しい。
メーデーを続けるには、やはり祝日にするしかない。しかし、連休であればもっと集まらないかもしれない。だったらバカンス休暇をつくって、そちらで休暇をとってもらえばいい。 もっとも5月1日という日には、歴史的に意味がある。もちろんアメリカのように、それ以上に重要な労働者のための祝日があるというのであれば、他の日にすればいい。 労働運動の長い歴史があるアメリカとイギリスのようなアングロ=サクソン地域を除けば、ほとんどの国がメーデー、すなわち5月1日を労働者のための祝日にしている。
ヨーロッパ諸国が5月1日を休みにしているのは、第二インターナショナルの歴史的背景があるからだ。シカゴの労働者の悲劇を忘れないという共感の上に決められたのだ。 しかし、一方メーデー発生の原因となったシカゴのあるアメリカでは、この日が祝日ではないのだ。アメリカのレイバーデーは9月の第1月曜日だが、それはシカゴより以前(1882年)にニューヨークでレイバーデーが始まったからでもある。 日本でも勤労感謝の日があるが、しかしこの日は労働者のデモ行進の日ではない。だったら祝日にすべきであろう。
しかし、残念ながら労働者の権利をしっかりと守ろうとする人々は、日本にはあまりにも少ない。その意味でも日本は国際社会から孤立しているのかもしれない。 ■血なまぐさい事件が起きるメーデー 5月という季節はとてもいい季節である。しかし、歴史的にこの5月には血なまぐさい事件がいろいろ起こってきた。その1つが1871年のパリコミューンである。パリコミューンは1871年、普仏戦争の講話に反対したパリ市民が蜂起して世界初の労働者政権を樹立したものだ。
3月に樹立したパリコミューンは5月末から6月にかけて崩壊する。ちょうどさくらんぼの実る季節である。パリコミュ―ンの頃を思い返す、有名なシャンソン「さくらんぼの実る頃」の歌詞の最後はこうなっている。 「あの頃のことはずっと忘れない。傷ついた心をもって」 メーデーの日が世界の労働者の叫びの日であるとすれば、やはりこの日のことを忘れるべきではあるまい。
的場 昭弘 :神奈川大学 名誉教授