多様な業務プラットフォームに拡大するBox、AIを活用した多数の新機能を発表
AIでコンテンツ主導型の業務基盤に拡大 AIや生成AIは、企業や組織のビジネス、業務の在り方を大きく変えると考えられている。Boxも2023年にBox AIをリリースして以降、ユーザーがAIエージェントに自然言語で問いかけるだけですぐにBoxのコンテンツを見つけ出したり、内容の要約やメモ作成といった形で活用したりできるようにした。ポータルの作成・提供の「Box Hubs」でもBox AIを組み込みパートナーのAIソリューションも活用できる。Box AI自体では、近日中に異なる複数形式のコンテンツファイルをまとめて生成AIで要約できる強化を行うという。 今回のイベントでは、新たに顧客自身がBox AIのエージェントをカスタマイズできる新機能「Box AI Studio」を発表した。2025年1月の提供を予定する。Box AI Studioでは、顧客が任意の大規模言語モデル(LLM)、利用部門や担当者、利用権限などを設定するだけで自組織の業務に最適化されたBox AIのエージェントを作成し、実環境に適用した場合の効果検証までを行える。 講演のデモンストレーションでは、コンサルタント会社がコンプライアンス状況の確認や次に行うべき作業内容を確認するというシナリオにより、Box AI標準搭載のAIエージェントと、Box AI Studioで作成したカスタムAIエージェントの違いを披露した。標準搭載のAIエージェントでは、順守すべき法令や作業内容を文章に要約して提示するが、カスタムAIエージェントでは、危険性の内容や問題箇所、参照すべき法規制の条文などを特定して一覧表で提示することができるという。 最高技術責任者(CTO)を務めるBen Kus氏は、生成AIの普及が進む中で、今後さまざまなLLMを包括的に利用したり、文字や画像、音声、映像などのコンテンツをマルチモーダルに扱ったりしていくようになり、組織のビジネスや業務に即したAIエージェントを中心とする形に変わっていくとの方向性を示した。 現在の初期段階にある生成AIは、「AIアシスタント」として、一般的な知識に基づいて文字や画像のコンテンツを生成しユーザーに提供している。その進化が「AIエージェント」になり、多彩な情報やデータを処理してカスタマイズも行え、自律的に動作する特徴を備える。「エージェント=代理人」のごとく、定型業務だけでなく軽度な非定型の業務も人に代わって行うことができる。その先では、AIエージェントを前提にして自動化された業務フローや業務プロセスの世界が到来するだろうとのことだ。 例えば、自動車の事故でオーナーが車両の修理や費用を知りたい場合、現在の「AIアシスタント」では、一般的な修理内容や費用の相場感を回答することにとどまる。「AIエージェント」では、オーナーが損傷した車両を撮影して写真をアップすると、画像認識を行ってメーカーや車種、グレード、損傷箇所の状態などを分析し、より細かい修理内容や修理費用の見積もりまでも行ってくれる。 さらに、AIエージェント前提の業務プロセスでは、複数のAIエージェントが画像認識による分析結果や見積金額などを再チェックしたり、オーナーが修理に同意した後の修理工場の手配といったことまでも自動で行ってくれたりするイメージだ。 しかし、このような自動型の業務フローやプロセスの実現には、組織に蓄積された膨大な非構造化データを構造化データのようにシステムやアプリケーションで活用できるようにする必要があるなど課題がまだ多い。そこで同社は、Box AIを使って非構造化データからメタデータを抽出し、識別や分類を行う新機能「Box AI for Metadata」を発表した。 Box AI for Metadataを使用して、例えば、契約書の電子文書から契約内容の種類や機密性の度合いや分類、日付といった情報をメタデータとして自動的に抽出し、ある程度の範囲でカテゴリー分類もできるという。初期段階はメタデータの自動抽出が主になるが、今後は抽出したメタデータを基にワークフローが自動で走るような方向性で開発をさらに進めていくという。 また、コンテンツを起点にした業務効率化では、ワークフローや業務プロセス管理機能の「Box Relay」と電子サイン機能の「Box Sign」に加えて、新たにひな型などから基本的なウェブベースのワークフローを構築できる「Box Forms」と、Box Formsで起案されたワークフローからPDFなどのドキュメントを作成する「Box Doc Gen」を加えた。まずは限定プレビューでの提供になるが、将来的にパートナーSaaSなどのワークフロー連携なども構想している。 さらに、ノーコード開発で営業部や人事部、総務部、法務部、マーケティング部といった部署単位によるBoxベースのワークフローやポータル、ドキュメント管理・検索などの機能を実現する「Box Apps」も発表した。