AIを使いこなせる企業、使いこなせない企業、人間とAIの協働作業が期待外れに終わる決定的要因とは
■ AI活用の勝ち組・負け組ははっきりするのはこれから 実際に前述のデロイトによる企業アンケート結果では、4分の3近くの企業が「生成AI活用のために今後2年間で人材戦略の変更を検討しており、業務プロセスの変更、スキルアップ、再スキルアップに重点を置いている」そうだ。既に生成AIを導入済みの企業では、業務設計と人材育成の必要性をいち早く認識しているのだろう。 ただ、こうした設計や人材育成は、まさに言うは易く、行うは難しということになりそうだ。 先ほどのMITの研究では、人間+AIのパフォーマンスが、人間単独やAI単独の「より優れた方」を上回ったケースは、調査対象とした研究全体の中で42%だったそうである。 そうした研究は、企業内のあらゆる業務を偏りなく取り上げたものではないが、人間とAIのコラボレーションの過半数は期待外れに終わっていたわけだ。 さらにMITの研究者らは、単純な人間とAIの組み合わせではなく、より洗練された協働方法の研究も必要だと訴えている。 AIが判断した結果を人間がチェックするというシンプルな形式だけでなく、人間とAIがお互いに意見を出し合ってそれにフィードバックし合うといった、文字通りの「コラボレーション」的な形式も取り得るだろう。そこにはさまざまなバリエーションが考えられ、企業の中で最適解が模索されることになる。 冒頭で述べた通り、ChatGPTが登場して2年が経とうとしている。個人にとって、2年は新しいテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えるのに十分な時間だ。しかし企業、特に大企業が新しいテクノロジーに合わせてその組織構造や業務プロセスを変え、人材確保と配置を進めるのには、2年はむしろ短いとも言える。 生成AIの真価が発揮され、その活用における勝ち組企業・負け組企業がはっきりしてくるのは、これからになるに違いない。 【小林 啓倫】 経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。 システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。 Twitter: @akihito Facebook: http://www.facebook.com/akihito.kobayashi
小林 啓倫