AIを使いこなせる企業、使いこなせない企業、人間とAIの協働作業が期待外れに終わる決定的要因とは
■ AIを前提とした業務設計のやり直しに企業は耐えられるか? この結果を受けて、「優秀なAIに平凡な人間が横やりを入れるのが良くないのなら、すべてAIに任せてしまえば良いのではないか?」と考える方もいるだろう。確かに「偽レビューの検出」程度の作業であれば、AIに丸投げしてしまい、7割程度の精度に満足するのも良いかもしれない。 しかしチェックする対象が、より重大な結果を伴うものであったとしたらどうだろうか。 たとえば何らかの融資を求める書類であれば、その真偽を高い精度で判断できないと、詐欺師にカネを盗まれてしまう。病床や薬品といった医療に関するリソースを求める場合であれば、判断ミスが人間の生死につながりかねない。 そうしたケースを考えると、安全性や倫理的な観点から、人間とAIが協力する(より正確に言えば人間がAIを監督する)体制をつくるというケースは必ず発生する。 もちろん、企業内で行われる業務のすべてが、そうした人間による監督を必須とするほど重大なものというわけではない。多くの業務は「AIへの丸投げ」でも十分に回るだろう。 しかしAIに任せられる業務、任せられない業務の切り分けは一筋縄ではいかず、多くの企業において、AIを前提とした根本的な業務設計のやり直しが求められると考えられる。 また同様に、その業務の中にどのような人材を配置するのかという判断も欠かせない。 AIと人間がコラボレーションするとなった場合に、そこに参加させる従業員にはどのようなスキルや知識が求められるのか。もしそうしたスキルや知識を持つ人物がいないのであれば、そうした人材をどう確保したり、育てたりしていくのか。 このような判断と対応を進めていかないと、前述の研究結果が示しているように、コラボレーションしてもパフォーマンスが上がらなかったり、逆にAI単体の場合よりも下がってしまったりすることになる。