AIを使いこなせる企業、使いこなせない企業、人間とAIの協働作業が期待外れに終わる決定的要因とは
■ AIの力を十分に引き出せない人間側の原因 このテーマについて、米MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らが興味深い研究を行っており、その結果をまとめた論文が今年10月に発表されている。 「人間とAIの組み合わせが役に立つとき」と題された論文によると、彼らは人間とAIがコラボレーションして作業するという状況について研究した論文106件を対象に、メタ分析(複数の研究論文の結果を分析・統合して、全体的な結を導き出す手法)を実施した。 その結果から、人間とAIがそれぞれ単独で作業した場合よりも、人間とAIが協力した場合の方が作業結果のパフォーマンスが上がるためには、どのような条件が必要かを整理したのである。 そこから見えてきた結論の一つが、「いくら優れたAIを使っても、それを使う人間のパフォーマンスも高くないと、AIの力を十分に引き出せない」というものだ。 たとえば、この論文で引き合いに出されている研究の一つにおいて、「ホテルの偽レビュー検出」という実験が行われている。文字通り、ホテルについて書かれたレビューを読み、それが本物か偽物かを判別してもらうという内容である。 このとき、人間単独で作業した場合の正解率は55%、AI単独で作業した場合の正解率は73%だったが、人間とAIがコラボレーションした場合には、正解率は69%にしか達しなかった。 一方で別の研究では、「鳥の画像分類」という実験が行われている。こちらも文字通り、鳥の画像を見て、それを適切に分類してもらうという内容だ。 こちらの実験では、人間単独で作業した場合の正解率は81%、AI単独で作業した場合の正解率は73%だったが、人間とAIがコラボレーションした場合、正解率は90%と単独作業時を上回ったのである。 この事例から研究者たちは、人間が単独で高いパフォーマンスを示せる場合、AIの提案をいつ受け入れ、いつ自分の判断を優先すべきかについても適切に判断できることから、コラボレーション時にパフォーマンスが上昇した可能性があると推測している。 また逆に、人間のパフォーマンスがAIより低い場合にはAIの提案の取捨選択も適切にできず、結果としてAI単独より悪い結果になってしまうのではないかと指摘している。