室内に5つ屋外に3つの床レベルがある家?その理由とは。建築家ならではの才能を知る、若手アーキテクトの実例&フィロソフィー紹介
静岡県磐田市と東京の二拠点で設計活動を行う後藤周平さん。住宅やオフィス、店舗から家具まで幅広く手掛ける後藤さんが、設計するうえで大切にしているのが「余白の働き」です。 【写真で見る】リビングに浮遊するような床?複雑なプラン、その裏にある設計術を解説 暮らしのなかで使い方や居場所を発見し、また将来的に使い手や用途が変化しても対応できるような、余白のある空間を目指しているといいます。 そのために地道に向き合うのが、当たり前の寸法を一つひとつ検証すること。実直な設計姿勢によって穏やかで心地よい空間が生み出されています。
実例/室内に5つ・屋外に3つの床レベルをもつ家
段差の多い住宅街の一角に、質感の異なるグレーの左官材で仕上げた住宅が立っています。外観は四角い箱が段々と連なった形状。玄関を入ると、室内までさまざまなレベルの床が連続していました。 この「山手の家」を設計したのは建築家の後藤周平さん。敷地と道路は高低差が1mほどあり、さらに周囲の隣地との間にも高低差がありました。そこで、段差のある環境を室内まで連続させ、室内外の環境を緩やかにつなげようと考えたといいます。
「室内には5つ、外部には3つの床のレベルがあり、天井高もさまざま。立体的な空間構成によって余白、隙間や抜けをつくり出しました」と後藤さん。 オーナーは写真好きで、大きな作品を見るには距離感が必要でした。この空間構成であれば、床と床の隙間越しにも見ることができ、見え方もユニークです。
フィロソフィー/後藤さんが設計で大切にしているのは「余白の働き」
これまで住宅やオフィス、店舗の設計などさまざまに手掛けてきましたが、後藤さんが共通して大切にしているのは“余白”をつくること。 「余白は、暮らしのなかで新しい使い方や発見をもたらしてくれます。また、建築は将来的に住み手や用途が変わる可能性があり、その変化を受け止めるのも余白。なかなか捉えにくいものではありますが、余白を設計することが大事だと思っています」 「住み手には空間を使い倒してほしいと思っています。家はアナログな技術の集積なので、やろうと思えば後からいくらでも付け加えることができる。手を加え続けると楽しく暮らせますし、そのためにも余白をつくり、すべてを用意しすぎないよう気を付けています」