井上尚弥のSバンタム停留は「賢明な判断」 元世界4階級制覇王者が階級上げに持論「キャリアを台無しにする必要はない」
果たして、この先、どこまで到達するのか。群雄割拠のボクシング界において「世界最強」とも称される井上尚弥(大橋)の行く末は注目を集め続けている。 【動画】井上尚弥に日本流の礼節 キャリントンがKO後に見せた異例の行動 昨年1月にスーパーバンタム級に転級した井上。そこからわずか2戦で4団体統一を果たした31歳は、去る5月6日に東京ドームで行われたルイス・ネリ(メキシコ)戦に6回TKOで勝利。プロキャリア初ダウンを喫したものの、難敵を危なげなく退け、4団体防衛を果たした。 まさに敵なしの状況にある井上には、すでに1階級上となるフェザー級の猛者たちから対戦を熱望する声が殺到。進級を期待する米メディアでも「明らかに奇妙」(『Boxing247』)と辛辣に報じられてもいる。 もっとも、井上の態度は明確だ。昨年12月のマーロン・タパレス(フィリピン)との試合後に「来年、再来年とまたこの階級でもっと強い姿を見せられるように精進していきたい」と明言。さらに今月8日(現地時間)に米スポーツ専門局『ESPN』の番組内で「しっかりとフェザー級の身体というものになった時に考えます」と強調。あくまで「ベスト」を求める姿勢を貫いている。 先述のように手厳しい意見を展開するメディアも少なくない。一方で絶対王者のブレない考え方を好意的に受け取る識者もいる。米専門メディア『Pro Box TV』のメキシコ版に出演した元世界4階級制覇王者のフアン・マヌエル・マルケス氏は「どんなボクサーでも自分のベストだと考える階級を快適に感じるものだ。イノウエはスーパーバンタムをそう捉えているなら留まるのは賢明な判断だ」と断言した。 「ここまでの輝かしいキャリアを台無しにするようなリスクを冒す必要性は全くない。イノウエはバンタムとスーパーバンタムで4団体統一王者になったという功績があるのに、なぜ階級上げを急ぐ必要があるんだ? 彼は今の階級でも素晴らしいし、トップファイターたちを打ち負かしているじゃないか」 さらに「イノウエがスーパーバンタムで『やり尽くした』と感じる時にフェザー級に移ればいい」と絶対王者の胸中を慮ったマルケス氏は「今やるべきはスーパーバンタムで誰が一番なのかをハッキリさせることだ」とも強調。現階級に留まる決意を示している日本人スターに課題を投げかけている。 「まずは本当に戦う相手がいなくなるまでやるべきだ。そして、自分が成長し、『これはいけるぞ』と感じた時に次に進めばいい。フェザー級で戦うのには相当な自信が必要になるからね。彼のような選手は単純に階級を上げることが目的にはならない。そこで勝たなきゃいけないんだ。適切に上がっていくのには、良い戦略が必要になる」 自身にとって5階級制覇も絡んでくるフェザー級で戦うための“準備期間”をいかに過ごすか。スーパーバンタム級で敵なしの王者としての地位を固める井上は、間違いなく真価を問われている。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]